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「オラたちで、どうにかしては、いけねぇだか?」
それまで黙っていた村人Dが、口を開いた。
「オラたちで、退治してはよ?」
「バカなこと、言うなっ」
名主がピシャリと言った。
村人Dはうつむいた。
が、黙らずに、とつとつと続けた。
「毎日の野良仕事で、鍛えられてるオラたちだ。
妖怪の一匹や二匹、どうにかならねぇ理屈はねぇ。
みんなでかかれば、妖怪なんか」
村人Dは、だんだん調子づいてきて、顔を上げた。
そして、鬼のような形相の名主と、まっ正面から向き合うはめになった。
村人Dは、出かかっていた言葉を、ゴクリ、と飲みこんだ。
「滅多なこと、言うでねぇ」
名主は、むしろ静かな声で言った。
「アスハ村を、忘れただか」
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