ワガミ村妖怪騒動

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 名主と名主の息子が旅立って、三日が経った。  名主の親子は、三人の侍を連れて帰ってきた。  村人全員が呼び出され、名主の家の庭に、平伏させられた。  縁側に腰かけた侍たちは、満足そうに彼らを見下ろした。 「妖怪が出た、と正直に申し出たのは褒めてつかわす。  そのほうらは、身の程というものをわきまえている。  農民には、農民の分際、というものがある。  じつに、えらい」  ホッとした村人たちは、口々にお礼を言った。  すると侍たちは、あきれ果てたという表情で、顔を見合わせた。 「ちがう、ちがう。  退治をするのはわしらではない。  まったく、これだから、モノを知らん田舎者は」  いちばん年上の侍Aが、苦笑をかみころして、言った。 「我々は、物を知らぬそのほうらに、わざわざ教授をしに来てやったのだ。  妖怪退治には、古代より、由緒正しい作法があってな。  京におわす、それはそれは尊い血筋の方々だけが、妖異を祓い清めることができるのだが、これから、その方々をお招きしなければならん。  もし非礼があっては、代官所としても、沽券にかかわるのでな」
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