2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
名主と名主の息子が旅立って、三日が経った。
名主の親子は、三人の侍を連れて帰ってきた。
村人全員が呼び出され、名主の家の庭に、平伏させられた。
縁側に腰かけた侍たちは、満足そうに彼らを見下ろした。
「妖怪が出た、と正直に申し出たのは褒めてつかわす。
そのほうらは、身の程というものをわきまえている。
農民には、農民の分際、というものがある。
じつに、えらい」
ホッとした村人たちは、口々にお礼を言った。
すると侍たちは、あきれ果てたという表情で、顔を見合わせた。
「ちがう、ちがう。
退治をするのはわしらではない。
まったく、これだから、モノを知らん田舎者は」
いちばん年上の侍Aが、苦笑をかみころして、言った。
「我々は、物を知らぬそのほうらに、わざわざ教授をしに来てやったのだ。
妖怪退治には、古代より、由緒正しい作法があってな。
京におわす、それはそれは尊い血筋の方々だけが、妖異を祓い清めることができるのだが、これから、その方々をお招きしなければならん。
もし非礼があっては、代官所としても、沽券にかかわるのでな」
最初のコメントを投稿しよう!