2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
作法とは、と問う村人に、
「難しいことを言ったところで、そのほうらの頭では理解できまい。
簡単なところから申そう。
金がいる」
「金、でございますか」
「うむ。
はるか京から来ていただく際の路銀として、とりあえず、百両」
ひゃ。
ひゃ。
ひゃ。
あちらこちらで、出来損ないのしゃっくりみたいな声が漏れた。
村人たちは、二の句が継げなかった。
名主が代表して、やっとのことで、言った。
「そのような、大金は、とても」
「案ずるな。
手はずは整えてある」
手はず、というのは、早い話が、娘を売れ、ということだった。
手回しのいい侍たちは、すでに近くの宿場町に連絡済みだった。
翌日には、遊郭の店主が、村にやって来た。
最初のコメントを投稿しよう!