ワガミ村妖怪騒動

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 村人たちも、まったくの無一文というわけではなかった。  こういうときのために、毎年みんなで金を出し合って、共同の貯金をしていた。  だが、百両というのは、彼らの想定を超えていた。  娘を売らねば、とても、まかなえない。  どの娘を売るのか。  ちょうど、村には二軒、村八分になっている家があった。  何年か前、米作りをしくじって年貢が払えなくなり、ほかの村人に借金をした家だ。  都合のいいことに、どちらの家にも、年頃の娘がいた。  二人の娘を遊郭の店主に引き渡すと、百両に足りない分が、足りた。  その日の午後には、村を代表して名主の親子が、侍Cに付き添われ、京へと旅立っていった。  侍Aと侍Bは村に残り、討伐隊が到着するまで、村人たちを指図することになった。 「見張りの役に就く者以外は、山に近づくな。  道を歩いてもならん。  野良仕事?  ならん、ならん」 「ですが、もうすぐ田植えが」 「農民の分際で、くちごたえか。  ならんものは、ならん」
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