ワガミ村妖怪騒動

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 田植えができなければ、年貢が納められない。  年貢が納められなければ、罪に問われ、厳しく罰せられる。  死活問題である。 「年貢と、妖怪と、この天下にとって、どちらが大事か。  そのていどのこともわからんのか」 「では、今年の年貢は、納めなくともよい、と」 「年貢は納めよ。  ビタ一文、不足すること、あいならん」 「そんな、無茶な」 「天下のご政道に対して、無茶、とはなんだ、無礼者めが。  蓄えをしておかなかった、そのほうらの、自業自得であろう」  言いながら、抜いた鼻毛を、侍Aは、フッ、と吹き飛ばした。  それから、犬でも追っ払うみたいに、村人たちへ手を振って見せた。  村人たちは納得がいかず、動かずにいると、いきなり侍Bが刀を抜いた。  村人Fが、背中を割られて、死んだ。  村人たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げた。
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