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『詳しい話しは、後程。
エーテ領にご挨拶をしてから御伺い致しますわ。』
母さんが丁寧に頭を下げたから、僕も真似をしてペコリと頭を下げた。
『おう!我々は、誰が来ても歓迎するがな。魔の森に入るには、エーテ領を通る許可をもらわなけりゃならんからな。』
『で?そのエーテ領を通って此処まで?』
『いやぁ!うちの山羊が逃げてしまってな。夢中で追いかけていたら、いつの間にか此方へ出てしまっていた。
…ついでだしエーテに会って、最近の獣人国の噂話しでも聞こうかと思ってな。』
豪快に笑うこのおじさんからは、あまり悪意は感じないのだけど?
『まったく…相変わらずよね。
私達は、王の卷族達に襲われて住処を捨てる事になったわ。
奴等は見境無く、狼を襲っているの。』
『おいおい。理不尽な罰を受けた上に、不可侵の筈の君達の領域を侵害していると?
しかも、王の眷族と言う事は…他の獣人には知られずに?と言う事だな。
それは、穏やかな話しではないな。』
『戦いを挑まれて負けたモノが罰を受ける事は仕方ない事よ。
獣人ではなくとも魔力を封印されても、命が守られただけでも良しと思っていたのよ。』
『だが、奴等は君達を…。』
『普通の狼と区別がつかずに、狼全てを根絶やしにする気らしいわ。』
難しい顔をして考え出した途端、捕まえていた山羊が暴れ出した。
『先ずはエーテのところへ行こう。』
『そうね。…ウォン!』
母さんのひと吠えで隠れて様子を見ていた群れが揃い、山羊を抱えて先頭を歩く半身おじさん半身馬の彼の後ろをついていった。
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