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「コラ!あほシュー!!!」
と、叫んだ口に、苦い薬がスプーンと一緒に入れられた。
『リンゼ?良かった。』
安堵した母さんの温かい額が僕の額に当たった?
僕と母さんは、柔らかな木のベッドに寝かされていて?
僕達の足元には、シューが丸まって眠っている。
シーツ代わりに敷かれた布には見覚えがあるが…周りの室内の景色と臭いには、まったく覚えがない。
クゥ…と、お腹の虫が鳴いた。「クゥン…」と、甘えた仔犬のように、僕の喉が鳴く。
『おお!気が付いたか?
ギルマス!この耄碌爺!!ガキが目ぇさましたぞ!医者は?あの呑んだくれのヤブは、どこ行った?』
知らない男が入って来たので、グルル…と唸り、母さんとシューを庇おうと身体を起こしたが、頭がぐるぐるしてまた布のシーツ上にへたり込む。
『リンゼ、心配いらないわ。彼が、私達を助けてくれたのよ。』
バタバタと知らない顔が集まって来て、僕は掛け布団にくるまって母さんに張り付いた。
『ホラ!お前ぇの顔が怖ぇとよ!レディもいるんだ。さっさと部屋から出て行け!耄碌爺!!』
そう言われてひとりは部屋を出て行った。
『そう言うお前さんもな。見なさい、子供が怯えている。ついでにレディの診察もするから、出ていきなさい。』
レディと聞いて母さんを見る。
母さんは、人型になっていて?「クゥン…?」と、僕が鳴くと…大丈夫よと言いながら、優しく頭を撫でてくれた。
『先ず、背中の傷は?…ほう。あれだけの深手が、此処まで癒えるとは…確かに不思議な布じゃな。
だが、失った血と体力までは叶わぬか…。』
四肢をあちこち動かされ、あかんべされたり耳の後ろをグリグリされていたら、寝ていた筈のシューが、おじさんの腕をカプリと噛んだ。
『心配せんでも、苛めている訳じゃあないよ。
水に砂糖を溶かしたもので3時間程様子を見て。食べれるようなら、粥かマッシュした柔らかい物を少しづつ食べさせなさい。』
男は、耄碌爺と呑んだくれのヤブと言っていた。耄碌爺は、早々に出て行ったから、このおじさんはヤブ…つまりお医者さん?
お医者さんは、母さんとシューの吹き矢の刺さった痕を診てから首を横に振った。
『レディの傷はキレイになった。ボロ舟に転がっていた吹き矢を調べて毒の種類は特定できたが、組まれていた術式だか呪式だかは…まだ…。』
『いえ。元々私は人型で育ってきましたし…獣人に戻れなくても、此処でならまったく差し支えありませんわ。
ただ…まだ脚に痺れが残っていて…。』
『本来ならば、即死量の毒を受けてその程度で済んだのは、奇蹟じゃよ。
シュー坊なんぞ、跳ね回る程回復している。普通では有り得ん話だ。』
あの吹き矢には、毒の他に何かの術式が組まれてたんだ。それで、母さんもシューも人型なのか。
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