道。

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道。

 -ある夜だった  この辺りの夜は暗い。  月明かりのみが足元を照らす。  それもそのはず。この田舎町に夜やっている店なんてないし、おまけに昨日の夜降った雪はただでさえ歩きにくいこの農道をさらに危険なものにしていた。  いつも通りの塾の帰り道のはずなのに雪はあたりの畑だらけの風景をすっかり変えていた。   -今日は三日月かな、、  そんな風に空を見上げて月について考えるほど、私の心には余裕があって、塾の後でも全く疲れていなかった。  まあ、授業は全部寝ていたのだけれど。  ふと、首冷たい風が吹きつける。やはりマフラーを忘れたのは失敗だったな。  私は首を隠すため、うつむき気味に歩きはじめる。  そんなときだった。  後ろから足音が聞こえる。  いや、足音自体は不思議なものではない。  しかし、この時間にこの道を歩く自分以外の人がいることに驚いた。   …   …   …ストーカー?はたまた通り魔か?  いやいや、そんなことないだろw私は自分の考えを捨てる。  第一、後ろの足音は私と同じくらいの歩調で歩いていて、近づいてくる気配はなかった。  家まであと少しのはずだ。なんかあってもきっと大丈夫。   …家まであと少し?  あることに気づいた。  この道は一本道で、うちの家がその突き当たりに当たる。   (さっき家までの最後の横道を過ぎた。)(お隣さんの家も過ぎた。)  ということは、今ここを歩いている人はうちを目指す人のみだ。  私は足を止める。  すると後ろの足音も止まった。  また歩き始めると、後ろの足音も動き始める。  背筋が凍った。   -後ろの足音は私をつけている。  一度捨てた思考は現実のものとなってしまったのだろうか。  そして、  私は走った。  走って走って走って走って走った。  家までの道がいつもより遠く感じる。  それでも私はうつむき気味のまま走り続けた。   …おかしい。  いつまでたっても家に着かない…   「…っ、疲れた、、」  後ろを振り向いて私を追っている人の正体を確かめる余裕も、そんな勇気も無かった。  それでも。  家に着かないのはおかしい。  もう十分は全力疾走してる。  このスピードなら3分とかからないはずなのに。  そろそろ息も上がってきた。  こんな雪道では足を上げるのすら辛い。  つい。  つい、雪に足を引っ掛けてしまった。  私はそのまま雪道に倒れこむ。   ー追いつかれる!  しかし。  しかし、その瞬間、後ろの足音が止んだ。   「え?」  怖くて後ろを向くことはできない。でも、足音が全く止んでいて、近づいてきていないことは分かった。  私はふと、家の方向を見る。  道の先に家は見えずただ暗闇が広がっている。  けれど、それ以外にも。  それ以外にも闇の手前に私はあるものを見つけた。  それは。  私の進行方向にまっすぐ伸びる足跡と。  私と全く同じ姿勢で転んでいる、私と全く同じ服を着た人の姿。
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