パラソルヒーロー

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 最初の記憶は小学生の頃。 あの日は少し熱っぽくて意識が朦朧としていたからあまり詳細な記憶はないが、雨が降っていたのは覚えている。 体調が優れないのに傘を忘れて雨に濡れながら帰宅していた時の事。 信号が変わるのをぼーっと待っていた時、いきなり後ろから腕を引っ張られた。びっくりして抵抗なんてできず一m以上は後ろに下がったと思う。 後ろを振り向けばよかったのかもしれないけれど、実際にはそれどころではなかった。 トラックが一台さっき自分の立っていた場所を通過して信号機に激突したのだ。 雨でスリップしたのか、運転手の不注意か、その辺りは判らない。事故の直後の記憶が殆ど残っていないからだ。 覚えているのは引き込まれた時に雨が止んだ事とぞっとする程冷たい手の感触、そして耳元で囁かれた「大丈夫?」という声…。 気付けば自分の家の玄関に座り込んでいたように思う。 その日の記憶はそれで終わり。 翌日、友人達にその話をしたけれど、殆どには真面目に取り合ってもらえなかった。 一人だけ真面目に聞いてくれた友人は雨が止んだ理由についてその人が傘を差していたからじゃないかなと言って「名付けるなら「パラソルヒーロー」かな?」と続けたから、それが呼称になったんだったと思う。今思えばよく解らない呼称なんだけれど…。
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