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初恋
雨の日は本当に嫌い。
テストの次の日くらいに嫌い。
まぁ好きな人なんてほとんどいないと思うけど。
せっかく早起きして巻いた髪も一瞬でストレートに戻っちゃうし、可愛い制服もカバンも靴も濡れちゃうし、良いことなんか全然ない。
家を出る前から憂鬱な気持ちになって、テレビ画面に目を向ける。
朝いつもついているニュース番組が7:00の時報を鳴らすと、私が家を出る時間。ニュースの中のかわいい鳥みたいなキャラクターが「7時だよ!7時だよ!」と画面の中で騒ぎ立てている。
「いってきます」
この前一目惚れして買った、モネの睡蓮の柄がプリントされた傘を玄関の棚から取り出して、家を出る。
雨の日はかわいい傘をさして気分でも上げないと。女の子はかわいいものを持つ使命があると思うから。
出来るだけ髪を濡らさないようにして、傘を前に傾けて歩く。霧雨みたいな雨が絶え間なく降り注ぐが、こういう雨が意外と濡れる。常に霧吹きで水をかけられてるようなもんだからたまったもんじゃない。
そう思いながら、信号を二つ渡り、本屋さんがある角を一回曲がる。
角を曲がった少し先に、黒いリュックを背負ったワイシャツの男の子が、駄菓子屋の目の前で白地にミルクティーみたいな色のブチがある猫と戯れている姿が見えた。
心臓がちょっとだけギュッてなって、体がポカポカする。
今日もいた。
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