初恋

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あいつが所属しているサッカー部と私が所属している吹奏楽部の部活の朝練は7:30から。朝練に間に合うギリギリの時間まで、この駄菓子屋に住みついてる(飼ってるかはよくわからない)猫とじゃれあってる。 「水嶋おはよ。」 そっと後ろから声をかける。 水嶋は猫を撫でながら首だけ私の方を見た。 「おはよ。」 サラサラの黒髪。こいつの髪はいつも湿気に負けてない。 「さっこ来ると、あーそろそろ行かなきゃって思うわ。」 「もう、私あんたのマネージャーじゃないんだよ。」 「うける。」 口の片側を少し上げ気味にニッと笑う笑い方は、私が好きな笑い方。 「ばいばい。」 猫を名残惜しそうな目で見ながら、水嶋が立ち上がった。そんな顔をされると、いつまでも猫と遊んでていいよと言いたくなる。 「今日雨なのにサッカー部あるの?」 「これくらいの雨ならやるんじゃないかなー。やらなくても中で階段ダッシュ。」 空を見上げながら、水嶋が言う。 6月に入って、制服も冬服から夏服に切り替わった。男子の服はワイシャツに黒いズボンだが、まだ肌寒いので水嶋は長袖のワイシャツを着ている。ワイシャツの袖をまくっていて、腕の筋が少し見えた。かっこいい。心の中でガッツポーズをする。 「あれ?そういえば水嶋、傘は?」 「持ってくんの忘れたー。俺家出た時降ってなかったし」 「なにそれ!今日絶対降るって言ってたよー!」 「まぁまぁ、いいじゃん。さっこの傘あるし。」 そして、私の傘の柄を持つと、ひょいと持ち上げて、 「俺も入れて?」 と言って笑った。
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