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天音と天羽。
子ども達に『天』のつく名前を与えた母は、その国の住人になった。
僕は僕の翼がいつか母の元へ連れて行ってくれるようで愛おしく、翼の歌をたくさん書いた。自分で歌うこともあったし、望まれて提供する事もあった。
日本を離れカナダに戻っても、JIBの曲にはそれなりに需要がある。まぁ……作るのは僕だけど、演奏するメンバーが巧いし。本当は僕みたいな若造が引き連れていい人達じゃないんだ。
ただ、僕本人がそこに居なくても、数字が動く不思議は感じていた。
「凄く綺麗な翼。ホントに機械彫り?」
「日本人は手先が器用なの」
「ご指名、俺でいいの?」
「もちろん。ダウンタウンではジョシュアが一番上手だって聞いてきたんだ~」
「 “Sissi Silvey” …… “Toujours” ……シルヴィーのスペル、合ってる?」
「うん、このままでお願い」
「恋人の名前はお勧めしないな。絶対後悔しちゃうよ?」
「日本でも同じことを言われた~。でも大丈夫。この間亡くなった母の名前だから~」
「……………」
「ジョシュア、どうしたの?」
「祈りを込めて彫るよ」
「ありがとう」
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