果てしなき旅

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   うなだれたラナは、絞り出すような声で言った。 「では私達は…地球は、どうすればいいのでしょう…」 「カテゴリー2の文明は、どれも同じような試練を迎えます」  メルシェラートがアメジストのような瞳を向けて告げる。翔大はメルシェラートが、“先行探査機がカテゴリー2の文明を発見したため”この恒星系に立ち寄ったと言ったのを思い出した。どうやら彼女達の認識では、地球の文明は“カテゴリー2”というものに属するらしい。 「カテゴリー2とは我々の文明レベルの事ですか?」  翔大が尋ねると、メルシェラートはゆっくりと頷く。 「カテゴリー2とは、科学技術に基づく社会的ブレイクスルーの、一度目を経験した文明を指します。それ以前の世界は文明の有無を問わず、カテゴリー1に属しています」  それを聞いて科学者の気質が首を(もた)げて来たのか、ラナは幾分気を取り直した表情で尋ねる。 「一度目の社会的ブレイクスルー…つまり、私達の世界で言う“産業革命”の事でしょうか?」  再びゆっくりと頷くメルシェラート。 「最初のブレイクスルーは劇的で、人々に大きな恩恵を与えると同時に、時間が経つにつれ、様々な弊害を発生させます。やがてそれは世界を破滅させるほどに…今まさにあなた方が経験なされている、状況がそれなのです」 「ではメルシェラート。あなたのファンスメラークという世界は、カテゴリーで言えば、どのレベルなのですか?」 「我々のファンスメラークは出発当時、カテゴリー4に属していました。今現在では、更なるカテゴリーへ進んでいる可能性があります」  翔大の問いにメルシェラートは淀みなく答えた。彼女の言っている内容に当てはめれば、ファンスメラークという世界は、さらに二度の産業革命レベルのブレイクスルーを経験した事になる。 「残念ながらこれまで、先行探査機が百光年ほど先―――つまり約百年前から発信された、カテゴリー2の文明の電波を受信し、調査に向かったところ、その世界はすでに滅んでしまっていた…といった事が何度かありました」  そのメルシェラートの言葉は、翔大とラナを複雑な心境にさせた。宇宙では今の地球と同じレベルの文明が、同じような世界を生み出し、その内の幾つかは、同じような過ちを犯して滅んでいっているのだ。 「不幸な出来事です。ただ…それを自力で乗り越える事こそ、あなた方の文明が次のカテゴリーに進むために、必要な力なのです」  メルシェラートがそう告げると、ラナは訴えるような目で、メルシェラートに願い出た。 「メルシェラート。技術供与が無理であるなら、これだけでも教えて下さい。ファンスメラークの人々は貴女の言う“カテゴリー2の試練”を、どのようにして乗り越えられたのですか?」  
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