果てしなき旅

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  「せっかくお出で下さったのですから、少しだけ、私とヒーラシェルムの旅をご紹介致しましょう…」  メルシェラートが言い終えると、翔大とラナの周囲でまたもや景色が一変する。何もない真っ白な部屋、メルシェラートの向かい側には、あのポートレートの中にあった、三十代の頃と思われるヒーラシェルムがいる。  ヒーラシェルムは笑みを浮かべて、メルシェラートに告げた。翔大の聴覚には、彼等の言葉が日本語として聞こえて来る。 「さあ、行こうか。メルシェラート」 「はい、ヒーラシェルム」  途端に周囲は宇宙空間となった。あの“立体映像”だと思われ、二人がいるのは『シャフマルーサ』と呼ばれる探査船の中に違いない。おそらくファンスメラークという、彼等の惑星を旅立つ場面を再現したものだ。翔大はふと後ろを振り返ってみた。巨大な白い球体が宇宙空間に浮かんでいる。あれがファンスメラークなのだろうか。  すると探査船『シャフマルーサ』は航行を始め、ファンスメラークの姿は一瞬で小さくなって消えた。次に木星を緑色のフィルターに通したような、巨大なガス惑星の傍らを矢のように通り過ぎたかと思えば、十秒も経たないうちにメルシェラートが報告する。顔には全く表情がなく、まるで人形だ。 「外宇宙へ出ました、ヒーラシェルム。これより恒星間航行速度となります」 「ああ。任せるよ、メルシェラート」  やがて場面は切り替わり、翔大は意識の中でそれが、彼等がファンスメラークを出発して十年後だという事を、“知っていた”。四十代となったヒーラシェルムは相応に歳を取っている。 「ヒーラシェルム。2518個目の恒星系のデータ取得を、完了しました」 「ありがとう、メルシェラート。いつも助かるよ」  メルシェラートは無機質な微笑みを見せて、「いいえ」と応える。対するヒーラシェルムは苦笑いを浮かべ、手で頭を掻いた。 「でも、十年経ってまだこれだけかぁ。分かっていたと言え、全然だなぁ」  さらに場面は切り替わり、翔大の意識は再び十年が経過した事を理解した。髪の艶が無くなり、皮膚にも老化が見え始めた五十代のヒーラシェルムがいる。ただその瞳の輝きは三十代の頃と変わらない。 「この星雲は凄い! こんなものは初めてだ。メルシェラート、少し時間をかけて追加調査しよう!」  興奮気味に語り掛けるヒーラシェルムに、当然ここでも姿の変わらないメルシェラートは、ぎこちない苦笑いで応じる。 「かしこまりました。ただ、お食事を抜かれるのは、差し控えてください」 「わかってる、わかってる! しかし、やはり宇宙はいい! いいな!」  ヒーラシェルム達ファンスメラークという惑星の住民は、地球よりどれぐらい文明が進み、どのような思想を持っているのかは不明だが、この好奇心に満ちたヒーラシェルムのメンタリティーは、地球人と似たようなもののように思えた。  
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