一人目 Sometimes sound

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「そうですね、非常に辛い、です」  貴方は笑う。そんなところまでそっくり。    そして、とても面倒。  面倒と投げ捨ててしまえば、残るものは何も無い。別の何かに興味を示すだけだ。  社会にしか生存出来ない私は、一応頭を下げてから手付かずだったお菓子に手を伸ばす。やっぱり、包装紙の手触りから、結構金の掛かったものだろう。  降りしきる雨と似た、ガサガサと烈しい音。  けれども、私が溶けていた、今もなお唸る雨の世界と違い、その音は一瞬だ。 「美味しいといいんですけど」   掴んだ袋はベージュ色。並んでいる英語はよく分からないけど、きっとチョコレートの甘い味がするのだろう。  予想よりちょっぴり濃い色のチョコレートが、私に顔を覗かせる。 『いただきます』  溶けないように、なるべく触れずに、そっと口に含んだ。 
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