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目的地の前まで体を運ぶと、自然と止まった体が、今一度猛烈な雨の感覚を心へ伝え始める。
サイズもぴっちりな長靴を履いているのに、いつしか靴下が濡れている気がした。
足が水溜まりに、この灰色の街に溶け込んでいるようなんだ。
ここに来たかったのは本当だけど、雨は気ままだから、止むまでもう少し歩いていたい。嫌いなモノにも我が儘を貫いてきた私は、せめて楽しみには欲を出すまいと、目的地を見つめ直す。
そびえ立つ目的地は、無機質な建物。不吉な雰囲気だけど、雨がそれを濁らせる。
私も雨に馴染めているかな、って、じんわり思ったけど。
そんなことはないよって、もう一人が答えかける。
それはそうか。昔のお気に入りの傘なんて、カラフルで映える。
目立ちたいのか、混ざりたいのか。
私はどっちなんだ。
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