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私ははち切れそうな胸を無視して、建物に入った。大好きな傘を濡れたまま閉じて、入り口にあった傘立てに立てた。
雨の音が扉の奥からこもって聞こえる。この音も好きなんだよね。同じ世界なのに、別の世界みたいで。
建物の中も灰色だった。きっと本当は真っ白なんだろうなぁ。
薄暗い空間には、独特の匂いがたちこめていた。なんだか病院みたい。
妄想とはちょっと違ってたけど、これもこれでおもしろい。初めて、っていうのは、いつもおもしろいものばっかりだ。
人気が全くないところにぽつんとある階段。導かれるように、のぼってみた。
結構長くて、ガラス越しに外もあんまり見えないから、閉じ込められちゃったのかな、なんて不安が脳裏をよぎった。
のぼりきったら、一本道だった。外からの灯りしかないだけ、少し安心した。
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