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私はその扉に、一歩、三歩と近づいた。きっとここが終着点なんだって、本能で感じ取ったから。
一応ノックをしてみる。指の骨に震度が走って、コンコンと思ったより低い音が空間に馴染んだ。
「はーい、どうぞ」
それから間もなく、扉の向こうから声がした。久々に聞いた声という存在に、違和感と嫌悪感が全身を回る。
気持ち悪い、どうして。
誰かも分からない声なのに、どうして苦しい。どうして怒りがこみ上げてくる。
どうして、どうしてどうして。
「ごめんなさい、わざわざ来てくれてありがとう。どうぞ」
その一言で目が覚めた。
私、なんだか急に胸に何かが詰まって。息としてもそれが出なくて。
大きく深呼吸をして、全てを落ち着かせよう。
そんなの無理なんだけどね。
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