13人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
T家のうさみ
こんにちは! 私の名前は高畑亜美。小学三年生になったばかり。家族は、お父さんとお母さんと、そしてお姉ちゃんの四人暮らし。……と、言いたいところだけど、実はね、家族はもう一匹いるの。え? 犬? 猫? どっちなのって? ううん、違うよ、どっちでもない。これはもう一匹の、私の家族のお話だよ。
「そろそろ寝る時間よ、いつまで遊んでるの」
「いいじゃん、明日は土曜日だもん」とお姉ちゃん。
「まだ遊びたいー。うさみも、まだ遊びたいって」
私は自分の思っていることを、『うさみ』に代わりに言ってもらうように言う。うさみの頭をちょっと動かして、まん丸黒目をお母さんに向けた。
「うさみちゃんはもう寝たいって言っているように聞こえるけどなあ」こういうお母さんも、うさみと遊びたいんだろう。
「ううう」
うさみの頭を左右に動かして首を振るようにする。私が言っているんだけど、まるでうさみが本当にしゃべっているみたいに。
「うさみちゃんは遊ばれて疲れたって言っているよ」
「うちゃあ」
またお母さんに向かってうさみは首を振る。疲れてないよ、まだ遊ぶもん、そういう意味をこめて。
ぬいぐるみ遊びはお母さんもお姉ちゃんも私も大好きなのだ。
そう、ぬいぐるみの『うさみ』は家族みんなのアイドル。私が赤ちゃんの時、お姉ちゃんの誕生日プレゼントとしてもらったんだって。一応お姉ちゃんのものだけど、私も遊ぶし、お母さんも時々私たちと一緒に遊ぶ。
うさみは長い耳をしていて、灰色と白のお顔をして、指はないけれど両手両足があって立つこともできる。果物が散りばめられたような柄の赤いスカートを履いていて、えりには白いリボンもついている。女の子なのだ。
「とにかく、早く寝なさい。亜美は、今日からお姉ちゃんと一緒に寝るんでしょ」
「……うん」思い出した。急に私のなかに不安が出てきた。
「お姉ちゃん、ちゃんと眠れるか見てあげてね」
「はーい」お姉ちゃんは、私の手の中にあるうさみの右腕を挙げて返事をした。
不安。これまではお母さんとお父さんの間で眠っていた。でも、小学三年になって一週間、生活リズムが落ち着いてきたこの日から、お姉ちゃんの子供部屋……じゃなくて二人
最初のコメントを投稿しよう!