運命ならば

1/10
68人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
由香は現在22歳。背が小さくて色白な肌、大きな目をした一見純朴なる乙女だ。しかし実情は箱ヘルスと呼ばれるところで働いている。この店のシステムは早い時間は60分1万5000円の格安の風俗店だ。なぜ箱ヘルスと呼ばれているか解らないが、箱のような狭い一室で春を売る行為が行われているから、そう呼ばれているのだろう。体を売ってお金を稼ぐのは楽そうに思われるが、実はそうではない。嫌われないよう、気分を損ねないよう、気を使って接客もしなくてはいけないし、生理的に受け付けない相手と性関係を結ぶのは容易に出来る事ではない。辛いのなら辞めてしまえと思う人も多いと思うが、小さな頃から親に虐待をされて中学しか卒業した事のない由香は昼間の職業に就くのが難しかったし、一人暮らしをしている身分ではそう安い時給の仕事でやっていける訳もない。親の借金だって背負っているのだ。借金の残りは数千万、まだまだこの仕事をしなくてはいけないだろう。 由香が勤めている箱ヘルスは部屋が6つ程の一般的な大きさの店だ。部屋は自分の場所が決まっていて、掃除もしなくてはならないし、備品も自らが調達しなくてはならない。結構厳しい世界なのだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!