運命ならば

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「シャワー出ます」 廊下を見渡してからそう言って部屋に戻り、また布団にはいってイチャイチャしていると、10分前のタイマーが鳴った。 「もう時間?」 「うん。10分前だって」 「そっかー。残念だな。キスしていい?」 さっき、もっと凄い事をしたばかりなのにいちいち確認を取るなんて男の人って可愛い。 由香は目を瞑ると、柔らかくて熱い唇が、自分の唇に触れた。胸がキュンとなった。 亮大さんは仕事帰りだったようでスーツを着てきていた。由香は丁寧にそれを着るのを手伝う。 「今日は有難う」 「うん。そうだ、これあげるよ」 亮大さんは由香の手を開いて一万円札を数枚握らせた。 「パチンコで勝ったお金の残りだよ」 「えー。いいよ。いいよ勿体ない。じゃあ、これでまた来て、ねっ」 「何時来れるか解らないし、してるときから由香ちゃんに残りのお金あげようって決めてたんだ」 由香は戸惑う。今までお小遣いは貰った事があるが、初めてのお客さんにこんな大金・・・ 由香は1枚だけ抜き取って、残りはスーツのポケットにそっといれた。タイマーが5分前を告げる。急がなくては。 お客さんが帰る時は入口までお見送りをする決まりになっている。 「またね。仕事頑張ってね」 ほっぺにキスをする。 「うん」 そう言って亮大さんが手を差し出してきた。由香はその手を強く握ると少し自分の方に引き寄せ照れたように微笑んだ。名残惜しそうに手を放す。 バイバイ。小さく手を振る。 また来て欲しいな。 疑似恋愛を体験させてあげるつもりが、逆に自分が切なくなってしまう事もよくある。ミイラ取りがミイラになるのだ。 由香は気を取り直してベッドの布団を敷き直した。
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