ビチグソ転生。19話

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「雌豚ども、雌豚どもめゲロゲロ」  僕は呟きながらダイベンガーを目指して歩いていた。ダイベンガーのコックピットに置き去りにして忘れていた便器を回収するためだ。しかし僕の心の中は今では大事な便器のことよりも、ブラカスちゃんとエメドラちゃんに対する激しい怒りで張り裂けそうになっていた。 『早くいっトイレ!』  別れ際に二人の言い放ったあの言葉が頭から離れない。そして何度も何度も頭の中でリフレインしている。 (早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ)(早くいっトイレ) 「うがーあっ頭が割れるようだゲロ、あの、あの雌豚どもめゲロー」  許せない!   あの二人は僕の事を、絶対に仲間はずれにしようとしているのだ。そして、それを面白がって喜んでいるに違いないのだ。そして二人だけの楽しみを共有するように、その合い言葉として選んだのが、あの言葉だったのだ。 『早くいっトイレ、ただし一人でな!』  これだ、この隠されたメッセージが、僕の心にズッポリと突き刺さって苦しめているんだ。そうだ、そうに違いない。  思えば二人には、出会った時から怪しいところがあった。  何故なら僕とは二人とも初対面だったけど、二人はその前から知り合いだったのだ。だから僕と出会う前にあらかじめ、二人は何か申し合わせておいたとする。そうして僕というこの世界の新参者の獲物を見つけて、からかって遊んでいると言う可能性だって十分にあり得るのだ。  こうして僕一人だけが別行動を取らされているうちに、二人は何か新しいイタズラの計画を考えているに違いない。そうして、僕がまんまと罠にはまって失敗し恥を掻いたとき、それをネタに二人で大爆笑するに違いないんだ。 「ちきしょうゲロ、あの雌豚ズルンズめゲロ! 絶対に絶対に許さないゲロ。ダイベンガーのコックピットから便器を回収して戻ったら、その後でしっかりと教育してやるんだゲロ。だれが主人公でだれがその引き立て役なのかを、そのムチムチのプリプリの体に、僕がしっかりと教え込んでやるんだゲロ」  二人は水浴びをするために水着に着替えると言っていた。そうだ、シジミと四つ葉のクローバーの水着だ。乳首だけが隠れる、ガンバリパークでは一般的で常識的とされる極小のマイクロ水着だった。それを今、二人は木陰に隠れて身に付けている所だ。そして僕が便器を持って返ってくるのを待っている・・・・・・。  二人は僕が戻った頃には、すでに着替えを終えて待っているはずだ。そうだ、主役の僕を差し置いて、二人だけで先にガンバリ湖で水浴びをしているなんて事は考えられない。何故なら僕が、この物語の主役であって二人のご主人様だからだ。そんな僕を差し置いて、二人だけで水浴びなんて許さない。 「そうだゲロ、僕は二人のご主人様だゲロ・・・・・・」  ズルンズは、あの二人のドラゴンのズルンズは僕のシモベなんだ。そうだ、僕はドラゴン族をシモベにする事が出来る、特別なズルンズなんだ。そうだ、そういう可能性だって全く無いという事は無いハズだ。何故なら僕は、自分が何のズルンズなのかまだ知らないのだから。だから僕というズルンズが、いったいどんな存在でどんな能力が有るかはまだ誰にも分らない。分らないのだから何にでもなり得ると言うことなんだ。 「そうだゲロようしそうだゲロ、こうするゲロ。僕はドラゴン族をシモベに出来る特別なズルンズで、二人は僕に絶対服従なんだゲロ。そして二人は僕の正体を知らずに、この世界の新参者である僕をからかおうとしているんだゲロ。あろう事かご主人様になるハズのこの僕を、からかって笑いものにしようとしているゲロ。そして地頭の良い僕は、それを全てお見通しだゲロ。だからひとまず騙されて笑われてやるゲロ。だけどその後に僕は自分の正体を教えてやる。そうして今度は僕がしっかりと二人に、自分たちの本当の立場を教えてやるんだゲロ。たっぷりとな、ふへ、ふへへへへへゲロ」  どうやって躾てやろうか?  まずはあのシジミの水着を着る雌豚、ブラカスちゃんの方だ。ブラカスちゃんはあのシジミの貝殻を、水着の貝殻の上からデコピンしてやるんだ。そうすれば中に有る、あの柔らかいピンクの乳首が、ブラカスちゃんの乳首が、硬いシジミの中で前後左右に振動してビリビリと揺れてしまうに違いない。そうするとブラカスちゃんの乳首は硬くなってきて、それでますますシジミと強く擦れ合ってしまう。ブラカスちゃんは「ああー」と思わず叫んで、きっと立っていられ無くなるに違いない。  そうだそうだ。そうしてブラカスちゃんはしゃがみ込んで「便器ちゃん、よ、よせ、やめろよー」と、僕を見上げながら情けない声を上げるだろう。そうしたら僕は、その生意気でカワイイ小さな唇をつまんでやって、それから指で口の中をイジってやる。ブラカスちゃんは嫌がって唇を一生懸命閉じるけれど、僕が鼻をつまんでやれば息が出来なくなるから、そうしたらまた口を開けてしまうんだ。それで僕が口の中に指を突っ込むと、怒ったブラカスちゃんは歯を立てて抵抗する。でも僕の指はすごくギンギンに硬くなっているから、そんなの無視してズブズブとブラカスちゃんの中に侵入してしまう。そして次は、僕の指先から「とろーり」甘いお汁が出てきて、その汁をなめるともうブラカスちゃんは頭がボーとなって僕のいいなりだ。これはズルンズをいいなりにする特殊能力を持ったズルンズである、僕の魔法なんだ。  ここまですればもう、ブラカスちゃんは放っておいても大丈夫だ。もう立てやしないし抵抗も出来ない。なんなら次のエメドラちゃんを料理するときに手伝わせてもいい。なんせもう、ブラカスちゃんは僕のいいなりになったんだからしょうが無い。  そうだ、次はエメドラちゃんの番だ。  エメドラちゃんの水着は四つ葉のクローバーだ。だからあの四つ葉のクローバーの葉っぱを一枚一枚、ちぎってもぎ取ってやればいい。一枚もげば三つ葉のクローバーだ。乳輪の大きなエメドラちゃんは、三つ葉のクローバーでは乳輪を全て隠しきれない。だから一枚でも十分に辱められるはずだ。でも、そうやってクローバーの葉っぱを一枚一枚剥ぎ取っていくのは、なんとも興がそそられるじゃないか。そうだ、ジワジワとユックリと、エメドラちゃんを辱めるのだ。そしてクローバーの葉っぱが全部散ってしまったら、エメドラちゃんはもう僕の言いなりになるしかない。そういう決まりだし、何しろ僕はそういうズルンズとして生まれてきたのだから、そういう能力があるのだ。きっと間違い無い。  そうして言いなりになったエメドラちゃんはどうやって躾てやろう。そうだ、お尻だ。僕はあのお尻に窒息させられかけたことが有るじゃ無いか。あの失礼なお尻に、僕は復讐をせねばならない。具体的にあの、分厚いお尻の肉をどうにかせねばなるまい。両手でむんずと掴んでやろう。そうすればエメドラちゃんは「ああー」と声を上げてしまうに違いない。そして足に力が入らなくなって座り込もうとするだろう。だけど僕はそれを許してやらない。何故なら座られてしまったら、大事なメインディッシュが奧の方に隠れてしまうからだ。そうだ、エメドラちゃんの狙うべきメインディッシュ、それはあの分厚いお肉の奧に隠されているのだ。そうだ、そうして、その奧に隠された肛門をやっつけるのだ。「あ!」  そのイメージが湧いたとき、突然僕の脳裏に電撃が走った。 「いや、待つゲロ!」  僕は立ち止まった。もうダイベンガーは目の前だった。その下に生えていた、降りるときに利用した木を、これから登って行くところだった。 「なんと言うことだゲロ。僕はなんていう勘違いをしていたんだゲロ!」  僕は目の前にある木を思わず強く殴りつけた。  ボコッ  手は痛かったが、今はそれどころでは無い。 「そうか、そういう事だったんだゲロ・・・・・・」  僕はようやくその事に気がついた。オッパイばかりに気を取られて、僕は重要な水着を構成するパーツを見逃していたのだ。  そう、水着のパンティーの方だ。  水着のパンティーは、けっこう重要な水着のパーツだ。パンティーは水着の約五十パーセントを占めるくらい大きなパーツのハズだ。それなのにどうして、今の今までその存在を忘れていたのだろうか?   それはやはりあの、ブラカスちゃんの手の平に乗ったシジミの水着に驚いたせいに違いない。僕はブラカスちゃんからあの黒いシジミの貝殻を見せられたときに、本来はブラカスちゃんにパンティーの方もシジミを使って「下半身の隠すべき所」を隠すのかと聞くべきだったのだ。しかしそれを僕は聞くことが出来なかった。何故か? それは乳首の存在のせいだった。  僕は下半身の重要な部分を隠すべき水着のパンティーという存在を、乳首というオッパイにおけるもう一つの重要な部分によって意識を逸らされて、攪乱されていたのだ。  本来ならば乳首はオッパイを形成する重要なパーツの一部である。だから乳首それ単体では存在しえないはずだ。つまりオッパイには最初から乳首が含まれているという事だ。それなのに僕は、巧妙な理論の入れ替えによってまんまと意識を逸らされた結果、乳首を隠すシジミという存在が、あたかもパンティーの代わりであるかのような錯覚に陥っていたのだ。  そして本来聞くべきだったガンバリパークにおける水着のパンティーの部分に対する重要な質問を、おざなりにして放置してしまっていたのだ。 「ああ、なんてことだゲロ。やっぱり僕は二人に騙されていたんだゲロ。きっと二人は、水着のパンティーの部分は、やっぱり上半身に合わせてコーディネートしてくるに違いないゲロ。そうで無いと統一が崩れるから、それは絶対に間違い無いゲロ」  そうしてその事から想像できるのは、このガンバリパークでの水着の正しい着こなし方だった。シジミと四つ葉のクローバー、それを使って重要な体の部位だけを慎重に上手に隠す方法。重要な部位とは、上半身においては乳首であり、そして下半身では肛門と、それからおしっこの穴という事で間違いが無い。  そうするとつまり、ブラカスちゃんはシジミでその下半身の大事な部分も隠すことになる。コーディネート的にそれは必須だろう。ホタテや赤貝などの他の貝殻ではあり得ないはずだ。つまりブラカスちゃんは、シジミの貝殻を合計で四枚必要としていることになる。そう言えばブラカスちゃんの手の中には、確かにシジミの貝殻は二組有った。つまりそれを二つに分けて四枚の貝殻にするのだ。そしてピンポイントで重要な部分に貼り付けるはず。  ではエメドラちゃんの場合はどうだろうか。つまり、四つ葉のクローバーではどうなるのかという事だ。何しろ四つ葉のクローバーはあの二枚しか存在しないのだ。これは本人の話から事実だろう。僕があれだけ食い下がったのに、やっぱり有りましたというのは彼女の性格からあり得ないはずだ。という事は、下半身は四つ葉では無く三つ葉のクローバーでコーディネートしてくるはずだ。では下半身は三つ葉でもこと足りると言う話しになる。何しろ重要な穴さえ隠れればいいのだから、そこを塞ぐためには三つ葉のクローバーの茎の部分をその穴に突き刺して利用すればいいはずで・・・・・・。  そこまで考えた時、僕は体に強烈な違和感を感じた。 「あああっちょっと待つゲロ、いけない、これ以上考えてはいけないゲロ」  ドクドクドクッ  僕の心臓が、内側から張り裂けそうなほど胸を強く叩いていた。  手首の動脈がドクドクと脈打つ音が聞こえてきて、それから首筋の頸動脈も指で触れれば触って分るほど激しく脈打っている。  僕はもう立っていられなくなって、側の木にもたれ掛かった。この木はダイベンガーのコックピットに登るための大事な木だった。  僕は傷だらけのダイベンガーを見上げて言った。 「おまえも、おまえもそうだったゲロ、こんな気持ちだったんだゲロ、ダイベンガー」  かつて魔界の魔神として恐れられ、何者の支配も受けず暴れ回っていたダイベンガー。そのダイベンガーの魂は、魔界一の美女の水浴びを見続ける、ただそれだけのために永遠に時を止めた。いま僕には、その気持ちが痛いほど分った。  しかし僕は、僕の肉体はダイベンガーとは違う。無敵の魔神の強靱な心臓では無く、小さくひ弱なズルンズの肉体に宿った心臓だった。 「まずい殺されるゲロ、僕はイメージの力で殺されるんだゲロ!」  これが、これがあの二人のズルンズが僕に仕組んだ罠だったのだ。僕はやっと理解した。そしてあの裏切りのズルンズの本性に気がついて戦慄した。 「ああしかし僕は、僕は殺されても、便器、便器だけはどうしても手に入れないといけないんだゲロ」  そうだ、どんなに裏切られようと、騙され傷つけられようとも、便器だけは死守せねばならない。何故なら奴らの狙いは僕の便器、そうに違いないからだ。  だったら便器だけは奴らよりも早く手に入れて、隠しておかければいけない。もしも奴らの元に便器を背負ってのこのこ姿を現そうものなら、たちまち僕はセクシービームの餌食にされてしまうに違いない。  セクシービーム、そのイメージがまたしても僕の中で膨らもうとする。奴らはビームを撃ってくる。どこから? それはもちろん、装備したシジミや四つ葉のクローバーの隙間からに違いない。奴らはそれらをチラチラさせて、中に隠したピンク色の部分を見せたり見せなかったりしながら、僕の目をチラチラ翻弄してくるに違いない。そして僕の頭を混乱させて沸騰させる。そうして餌食にして、その後でユックリと僕の便器を奪うに違いない。  それを阻止するためには、僕はこの木を登ってダイベンガーのコックピットにたどり着かなければいけない。  それなのに僕のお腹の下では、突如として奇妙な変化が現れていた。何か硬いでき物ができて、ズボンを突き破ろうと直立をしていたのだ。その物体が木を登ろうとする僕と、木の間に挟まって邪魔をしているのだった。 「くそ何だゲロこのでき物は? いったい僕の体に、何が起きているンだゲロ。何か、僕の中の何かが、まるで別の生き物のように言うことを聞かなくなってしまったゲロ。このままでは木に、この不格好なでき物が引っかかって登ることが出来ないゲロ」  しかし僕は、どうしても便器を取りにコックピットにたどり着かなければいけない。だから無理矢理でも木を登ろる必要があった。僕は勇気を出して木にでき物を押しつけながら、少しずつ慎重に木を登り始めた。  ズリズリ、  ズリズリ、 「ああ、何だゲロ何だゲロ・・・・・・、僕の、僕のお腹の下のでき物が、焼けるように暑くなっていくゲロ!」  僕が木に張り付いて登っていくたびに、僕のお腹の下に生えたでき物、いや出っ張りが木にこすりつけられていく。そして木の表面はボコボコしていて、そこに擦りつけられるたびに震動するマッサージ器を強くでき物が押しつけれているような、そんなすごい刺激が感じられた。そして出っ張りはズボンの中でいっそうビクビクと震えて、ますますたぎって熱くなっていく。 「ふぇー、ふぇーふぇー」  しかし、その脳髄をヤケ尽くすような激しい刺激に耐えながら、僕はようやくダイベンガーのコックピットまであと少しという所まで登っていった。 「ハアハア、アハン。なんと言うことだゲロ。こ、これがズルンズ達の真の呪いの力ゲロ。僕はこれほどの奴らを奴隷にしようと考えていたゲロ。でもこれでは、奴隷にするまでに僕が奴らの奴隷にされてしまうゲロ。気を、気をしっかり持つゲロ」  そして僕は、苦労してようやく木のてっぺんまで登り切った。  ダイベンガーのコックピットに空いた穴は目の前にあった。僕はコックピットの穴の縁に手を伸ばした。そして体が落っこてしまわないように、でき物ごとしっかりと木に密着した。  しかしその時だ、「魔が差す」というのはこう言う事を言うのだろうか? 僕はとある、創造的で独創的な可能性について思い至ってしまったのだ。 「待てよ・・・・・・もしも、もしもこのまま、この木に体を密着させたまま、下まで落ちていったら、つまり出っ張りを木に押しつけながら下まで落ちたなら、僕の出っ張りはいったいどんなことになってしまうんだゲロ?」  僕は恐る恐る地面を見た。高さは十メートルほどある。もし落ちたら骨折してしまうかも知れない。そうすればとても痛いだろうし、それに傷を直すには僕を騙そうとするエメドラちゃんの癒やしの力を借りなければいけなくなる。そうなれば僕はもう、奴らのセクシービームを体中に浴びて、確実に奴らの奴隷になってしまうに違いない。  しかし僕の体はもう、僕の言うことを聞かなかった。半分僕の体だったけれど、もう半分は誰か別の生き物が支配しているのだ。  その生き物は僕の体を自在に操って、腰をクイクイヘコヘコと前後に揺すって出っ張りを木にこすりつけていた。そして僕の下半身と木の肌を、永遠に離れがたい兄弟のように結びつけているのだった。 「アハアハ、アハン。ええい、静まれ静まれゲロ、そしてコックピットに飛び移るんだゲロ」  しかし僕の体はいつまでも未練がましく木肌を離れることが出来ない。その間中もずっと、腰をクイクイヘコヘコと振っている。 「アハアハ、アハン。気持ちいい、気持ちいいゲロ」  僕の思考はいよいよ、他の誰かに乗っ取られようとしていた。まるで誰かに寄生されているかのようだった。そして僕はもう、ただこの快楽だけを感じているだけで、体を動かすための運動機能は自分で制御することは出来ないのだ。 「アヘアヘ、アハン。もうダメだゲロダメだゲロ、もうどうなっても良いゲロ、この手を、この手を離すゲロー」  僕は誘惑に耐えきれず、ついに手を離した。いや、手を離したのでは無い。手の力をそっと緩めたのだ。そしてなるべく体を木に密着させたまま、十メートルの高さから緩やかに落ちていった。  ボコボコ、ボコ  ズルズル、ズルー 「あひーおちんぽ、おちんぽがブルブルして気持ちいい、気持ちいいんのー」  それは魂の叫びだった。  僕の心の中、本当の僕。  そこには誰の支配も及ばない、本当の僕だけがいた。  そして心の底から真実の魂が叫んでいた、絶叫していた。  ボコボコ、ボコ  ズルズル、ズルー 「ああああああ落ちるぅ墜ちちゃうの、ぼく、ぼく、ダメになっちゃう-」  お腹の下の出っ張りが、あまりの刺激のためにおしっこを吹きだした。  ブシャア、  ブシャア、  プシャプシャ、プシャ 「あひゃひゃひゃ、ひゃいいいいいんんん!」  プシャー  しかしそれでも僕の落下は止まらなかった。地面に向かって真っ直ぐに落ちていきながら、同時に僕は別の意味で墜ちていこうとしていた。それは堕落という意味での転落に他ならない。  ボコボコ、ボコ  ズルズル、ズルー 「あーあーイクイクイクイクー絶頂、僕チン絶頂してるのー」  ドシンッ  地面にお尻をしたたかに打ち付けて、僕の転落はやっと終わった。  ビクッビクビクビクッ  ビクン! 「ンア、ア、ア、ア」  僕の体が打ち上げられた魚のように地面をのたうち回った。しばらくは自制することも出来ない刺激に体を支配していたが、しだいにそれも緩慢になっていく。 「ハアハアハア」  やがて僕は底知れない堕落に沈む水面から、かろうじて自分自身を救い出す事が出来たようだ。 「ふう・・・・・・、スッキリしたゲロ」  僕は深いため息をついた。そしてしたたかに打ち付けたお尻をさすりながら立ち上がった。 「しかし、今のはいったい何だったんだゲロ?」  一旦墜ちるところまで墜ちてしまうと人は妙に冷静な気持ちになるものだ。僕はそれを経験によって今知った所だった。そして自分のほっぺたに、快感によってまき散らされた自分のおしっこがべっとりと付着している事が、酷く不快に感じられた。 「おしっこで汚れてしまったし、ズボンの又の間がボロボロで穴が空いてしまったゲロ。でもまあいいゲロ。どうせこの後水浴びをする予定なんだゲロ。エメドラちゃんかブラカスちゃんに、ズボンを直して貰うゲロ。それよりも今は、もう一度トライして木を登るゲロ」  お腹の下の出っ張りは小さくなっていた。だからもう、木に引っかかることは無さそうだ。しかしおしっこにまみれた木は別の、何か大量の白い粘液もまき散らされていて、僕はどうしてもそれにもう一度触れるのが嫌になった。そして木に登るののも嫌になってしまった僕は、今まで気がつかなかったとある事実に気がついた。 「そうだゲロ、どうして木なんて登っていたんだゲロ。あのくらいの高さならジャンプでひとっ飛びだゲロ」  僕は地面に手をついて踏ん張った。そして足を思い切り伸ばしてコックピットに向かってジャンプした。  ピョーン  僕のジャンプはダイベンガーのコックピットまで軽々と達した。  シュタッ 「よしコックピットに着いたゲロ。初めからジャンプしていれば良かったんだゲロ。そうすればあんな気持ちのいい・・・・・・いや、それよりも今は便器の心配だゲロ。便器は何処だゲロ」  僕は便器を求めて辺りを見回した。  破壊され尽くしたダイベンガーのコックピットの中は、あちこちガラス片の塊が散らばっている。僕はそれを靴で踏みしめながら歩いた。 「あっ有ったゲロ、僕の便器だゲロ」  便器はコックピットの壁に半分めり込んだ状態だった。そして蓋の方からこちらに突き出している。ボロボロのコックピットの中で何故かそこだけは傷一つ無く、便器の表面は白く滑らかな輝きを放っている。その姿はまるで、純血の乙女が生涯の伴侶を待ちわびているような慎ましさだった。 「すまなかったゲロ、もう何処にも置き去りにしたりしないゲロ。これからは肌身離さずずっと一緒にいるゲロ」  僕は便器に謝った。そしてこの便器の純血が危険にさらされていることを思い出した。そうだ、この便器はエメドラちゃんとブラカスちゃん、二人の好色で妖艶なズルンズに狙われているのだ。彼女たちは僕からこの便器を奪って、そして自分たちの物にしようと考えているに違いない。それだけは阻止せねばならない。もしも彼女たちにこの便器が辱められるくらいなら、いっそこの手でこの便器を・・・・・・。  そんな空想をしながら僕は、便器の端を持って壁から引き抜こうとした。  ヌルン  ヌルン  しかし力を入れて引っ張ると、引っかかりの無い便器は僕の手を滑ってすり抜けてしまう。  スポンッ  結局、どんなに頑張っても便器は僕の手をすり抜けるだけだった。 「困ったゲロ、このままでは便器が壁から抜けないゲロ」  僕は便器を壁から引き抜くための道具は無いかと辺りを見回した。しかしダイベンガーのコックピットの中には便器を引き抜くのに役に立ちそうな物は何も無かった。しかし代わりに便器の後ろに四角いタンクと銀色の取っ手が付いているのが目に入った。 「あれ、あんな所に見たことないタンクと、それからちょうどいい感じの取っ手が付いているゲロ。あんな物、僕の便器に付いてあったゲロか?」  しかしタンクは便器の陶器の白さと統一感があって、どう見てもセットとして最初から備え付けれていた物のように思えた。 「きっと気のせいゲロ。もともと着いていたタンクゲロ」  僕は恐る恐るタンクに着いた取っ手に触れてみた。それはやや抵抗は有るものの、グラグラと上下に動くようだった。 「どうしよう、本当にこの取っ手とタンクは便器のパーツの一部なんだろうかゲロ。それともダイベンガーにもともと着いていた、ダイベンガーの体の一部なんだろうかゲロ。そしてこれは動かしてもいい物なんだろうかゲロ」  いざ取っ手を動かそうとすると急に不安を感じた。そしてしばらく考えたが、やはりこの取っ手とタンクの正体が何なのか分らなかった。しかしこの取っ手を動かす以外に、抜けない便器をどうこうする方法は他に無いように思われた。 「ええいままよ、どうにでもなるゲロ」  僕は抜けない便器に痺れを切らすように、便器の取っ手を思い切り引き下げた。  ゴゴゴ、  ゴゴゴゴ、  ゴパー  タンクから音がして、水が便器の中に溢れ出る音がしだした。つまりタンクの中には大量の水が蓄えられていて、それが便器の中に流れ出したのだ。そして音の最後の方は、便器の中の水が便器の奥底に吸い込まれていく音だった。  ゴゴゴゴ、ゴゴゴ、  ゴパー  音はしばらく続いていたが、やがてそれも聞こえなくなった。それはタンクの中が空っぽになったという証だった。  と、同時に突然便器が壁から外れかけ、その隙間から水が噴き出した。  ブシャプシャー 「わ、危ない!」  とっさに便器に飛びつき便器が水流に押されて床に勢いよく落ちるのを防いだ。  水はすぐに止まったが、吹き出した水を顔から浴びてしまった。水の正体は不明で、若干気持ち悪いとも思ったけれど、自分のおしっこよりもマシかもと僕は思った。  しかしとっさに飛びついたのに便器の端は床に触れてしまった。僕は便器に傷が付いていないか慎重に確かめた。 「ほっ良かった、便器には傷ひとつ着いてないや」  それでも僕は便器の縁をいつまでも確かめて傷の手当てをするように撫でさすっていた。そうやってしばらく僕は、便器との再会の喜びを分かち合った。 「やっと、やっと僕の元に返ってきてくれた。これからはずっとずっと一緒だよ。もう絶対に離さないよ」  そして僕は他の変化にも気がついた。 「あ、ゲロゲロ言っていた喉も治ったぞ! ああこれでちゃんと喋れる良かったー」  こうして体調も戻って安心し、再会の感動も一段落付いた。  それから僕はポケットから便器担ぎ様のヒモを取り出し、いつものように便器にヒモを結びつけてそれを背中に背負った。  便器の重さはズッシリとしていて、ゆうに二十㎏はあるだろう。それを結んだヒモが肩にギリギリと食い込んできた。でも僕には、その便器の重量感どうしようも無く懐かしくて心地良く感じられた。 「ああこの重さだ。この重さこそが愛情と責任を背負う者が感じる、人生の重さなんだ。この重さこそが僕に生きている実感を感じさせ、困難に対して立ち向かう勇気を与えてくれるんだ」  便器に触れた瞬間から、いやその前からだった。多分、あの取っ手を動かして水を流したときからに違いない。その時から僕の心は、妙にスッキリした気持ちになっていたのだった。まるで心のヒダに絡まって詰まっていた邪悪な汚れが、綺麗にスッキリと洗い流されたような気持ちだった。  そしてそれと共に僕の心に染み渡るように、この厳しくも美しいガンバリパークの自然に対する無償の愛情が溢れだした。  僕はコックピットの穴から、傾きかけた日の光を受け輝く湖に視線を向けた。そしてその美しさに感動した。  その喜びの中心には大切な友達、そして恋人でもある二人のズルンズへの愛情がある。二人は今、裸同然の素晴らしい水着に着替え終わった頃だろう。そうして便器を背負った僕の到着を、今か今かと裸同然に待ちわびているはずである。  そして僕に、いとしい僕に対して、自分の挑発的であざとい水着姿を見せつける。その事で感じる恥じらいとときめによって、二人は恍惚として高まっていくに違いない。それは、花開いたばかりの乙女達が、初めて経験する喜びの体験に他ならない。 「あ、もしかしてそれで二人は僕を仲間はずれにしようとしたのかも知れないな。せっかくセクシーな裸同然の水着で登場するっていうのに、肝心の僕が一緒に着替えていたら、サプライズのドキドキも無くなってしまうもんね。そんなの無粋だし興も冷めてしまうってもんだからね」  僕は二人が、恥じらいながらも裸同然の水着で「ジャジャーン」と木陰から姿を現す所を想像して、お腹の下がまた熱くなってきてしまった。でも、さっきみたいなギラギラとした身勝手で暴力的な熱さとは全く違って、今度はなんだかポカポカとした優しい暖かさだった。 「えへへへへ、エメドラちゃんブラカスちゃん、奴隷にしようとか思ってごめんね。本当は奴隷にもなって欲しいけど、でも恋人の方がやっぱりいいよね。なんなら僕が奴隷でもいいかな。そんなの愛し合っていればどっちでも同じなのかも知れないからね。けっきょく僕らは初めから、お互いに対する愛情の奴隷だったっていう事なのさ」  これまで抱いていた退廃的でよこしまな感情は、便器の中の汚れた水と一緒に全て綺麗に洗い流されてしまった。代わりに僕の心を満たすのは、裸同然の水着を着た二人のズルンズへの限りない愛情だけ・・・・・・。 「エメドラちゃんブラカスちゃん、今そっちに行くからね」  そう言って僕は、ダイベンガーのコックピットからジャンプした。裸同然で待つ、彼女たちの元へジャンプしたのだ。  地上十メートルの高さのある、コックピットからのジャンプだった。 「あ、しまった!」  そして僕は、地上十メートルの高さから約二十㎏ある便器を背負ったまま落下していった。
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