act.13

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act.13

<side-CHIHARU>  翌日、僕たちが柿谷酒造を出たのは3時頃のことで、帰りに夕食を外で食べて僕の仕事場に帰り着いたのは、9時を半時ほど回った頃だった。  柿谷酒造では、「ぜひもう一泊していけ」と親父さんに言われたのだが、翌日僕に取材の仕事が入っていたので、申し訳ないとは思いながら柿谷を後にした。 「絶対にまた来てね。俊ちゃんの面倒、よぉくみてあげてね」  奥さんはそう言って僕の両手を握ると、酒粕と大吟醸をお土産にくれた。 「ちょっと、それじゃ俺が全然ダメな男みたいじゃないですか」  シノさんがそう返したので、その場にいた皆がドッと笑ったのだが、何となく微笑む奥さんの僕を見る目はとても真剣そうに見えたので、僕は笑うのをやめた。  あれって、きっと奥さん、本気で言ったよね。どういう意味で言ったんだかわからないけど・・・。  僕がそんなことに思いを馳せながら、仕事場のドアの鍵を開けようとすると、ゴホンとシノさんは咳払いをした。  振り返ると、予想通りシノさんがやや緊張気味の顔つきをして立っていた。  シノさんは緊張したり身構えたりする時、よく咳払いをするんだ。癖みたいなものかな。前に聞いたら、喉が詰まるような感じがするんだって。 「シノさん、どうしたの?」  僕が訊くと、「え?」なんて返してくるから、「緊張してるの?」と更に訊いた。  シノさんは鼻の下を擦ると、「ああ、千春の仕事場に来るの初めてだからさ・・・。何となく・・・」という返事が返って来た。 「あ、そうだっけ!」  僕も何だかテレくさくなって、同じように鼻の下を擦る。  何だか、シノさんの緊張が僕にうつったみたい。  僕は鍵を開けると、アンバー色のドアを大きく開いた。 「どうぞ」 「どうも」  シノさんは軽く頭を下げ、スーツケースをゴロゴロと押しながら、玄関に入っていく。  何かと地方出張の多いシノさんだけに、彼のスーツケースはあちらこちら傷だらけで、目印代わりの大きなシールがいくつか張られてあった。それがワインのミニボトル用ラベルを防水シールに加工した代物で、結構オシャレなんだ。なんでもメーカーさんのプレミアグッズらしく、僕もそれが欲しいというと、今度貰ってきてあげると約束してくれた。  シールが貰えたら、MacBookにでも貼ろうかな。  シノさんにはあえて言わないけど、お揃いのシールを貼っているものを互いにいつも持ち歩いてることになるから、離れていても繋がっているように思える。  案外僕って、乙女だよね・・・と内心すごく恥ずかしくなった。  断っておくが、僕がこんなことを思うのは、初めてのことだ。  これまでは、他人の持ち物に執着することなかったし。 ── 吹越さんと付き合っている時でさえ。  僕がシノさんの後について玄関を入りライトをつけると、シノさんが「わ、明るい」と目を瞬かせた。  僕の仕事場があるマンションは、いわゆる億ションというやつで、廊下は高級ホテルのように若干薄暗いんだけど、部屋のドアを開けるとエントランスはミルク色の人造大理石で床面が覆われているので、一気に明るくなる。   その先で切り替えられてるフローリングの床材やドアはウォールナット材で、深くて濃い艶やかな色合い。それとは対照的に壁面は漆喰風で、ナチュラルなオフホワイト色だった。  僕は、そのメリハリの利いたコントラストが美しいと思ったらから、ここを仕事場に決めた。  その雰囲気を壊さないように、廊下に置かれた小さなデスクや椅子も、李朝テイストな華奢でこっくりとした色合いの木彫家具に統一して、大小の観葉植物やガラスの器だけをインテリアとして置くようにしている。  シノさんはそれを見て、「千春って、やっぱ年齢の割に渋い大人の趣味してるよな」と言った。「まるで美術館かギャラリーに来たみたいだ」なんて言うから、僕は笑いながら「さすがにそれは言い過ぎですよ」って言い返した。  僕は玄関を入ってすぐ左手にあるドアを開ける。その先はバスルームだ。 「こっちが風呂場です」 「わ! 広い! うちのとは比べものにならん。しかも窓から東京タワーが見えるじゃん!!」  びっくり顔のシノさんを見て、僕はクスクスと笑った。   ── ホント、カワイイんだから。 「で、こっちが仕事場兼応接室。仕事場と言ってもここで小説は書いてません。取材を受けるとか外部の人間との打ち合わせするとか、対外的に使ってる部屋です。だからこの部屋までは、外部の人間が入ってきます」 「へ~・・・・」  シノさんが仕事場の中に入ってグルリと見渡す。  仕事場は、玄関入って正面にある20畳ほどの部屋で、部屋の入口は大きな引き戸式にリフォームしていた。  二枚の引き戸を開け放つと廊下から玄関まで一体のスペースになるので、更に広く使うことができる。  この部屋で大掛かりな撮影をすることもあるので、使い勝手がいいように岡崎さんがこんな風にリフォームしてしまったのだ。  外に面した大きな窓は羽目殺しで、高層階にあるこの部屋からは、周囲の風景がよく見渡せた。バスルームと同じ方向に窓が開けているので、むろん東京タワーも見える。だから、撮影しにくるカメラマンも絵になりやすいと喜ぶことが多い。  窓の手前には全然使ってないライティングデスクがあって、iMacが置かれてある。部屋の中央には、黒革張りで直線的なシルエットのデザインソファーセットを並べてあった。壁面には薄型の液晶テレビが掛けられてあって、その周りを取り囲むようにデザイン処理された収納家具が並んでいて、その中にDVDデッキやオーディオ設備、書籍等が収めてある。  ホント、一瞬の隙もない、まるで映画のセットのような完璧な部屋。  こんな調子なので、僕はここでは書き物の仕事はしない。  あくまで対外的に『澤清順』のイメージ作りのために流潮社がセッティングした部屋のようなものだ。  書き物をする時は大抵、この奥にあるプライベートスペースのあちらこちらに移動しながら、気ままにノートPCで仕事をすることが多かった。なので僕には、決まった仕事机は必要ない。 「仕事場の向かいのこのドアがトイレで、玄関とトイレの間にあるこのドアはクローゼットです。 ── ほら、結構広いでしょ。で、その先の磨りガラスのドアがパブリックとプライペートの空間を仕切ってるドアになります。ここから先が寝室とリビングダイニング」  廊下の突き当たりのドアを開けると、シノさんが「うわ~、久しぶり!」と声を上げて、リビングダイニングの中央にあった懐かしの長ソファーにダイビングして、グリグリと頭をソファーに押し付けた。  僕はそれを見て、思わず吹き出してしまう。 「シノさん、まるっきり子どもみたいだよ」 「だって会いたかったんだよ、こいつにも。よかったぁ、捨てられてなくて」 「まだ使えるし、もったいないから捨てる訳ないです」  僕があっさりとそう答えると、シノさんがソファーから顔を上げて僕を見て、「さすがしっかりしてるな、経済観念」と言った。  ソファーにかき付く仕草も、黒めがちな目を丸くしながら感心しているシノさんの表情も、まるっきり柴犬みたいで、まったく本当になんなんだろうって思う。 ── 可愛過ぎて。  ホント、こんなに僕を萌え死なせるほどの「生物」がこの世に存在してるなんて信じられない。  あ~、早くシノさんをグリグリしたい・・・。  僕は内心じれてしまって、プライベートルームの入口入って右手にあるドアを開けた。 「そしてここが寝室。ベッドも昔のままですよ」  シノさんが立ち上がって僕の側まで来ると、寝室の中を覗き込んだ。 「本当だ。月島のマンションにあったやつだね」  僕はシノさんの背後に立つと、そっと耳元で囁いた。 「初めてシノさんとセックスした時のベッドだもの。この先、他の家具を手放す事があったとしても、これだけは手放しません」  囁きついでに熱い吐息を吹きかけると、シノさんの身体がぶるりと震えた。  耳から頬にかけて、みるみる赤くなっていく。  突如シノさんが物凄い勢いで、僕の方を振り返った。  その神妙そうな顔つきを見て、僕は内心「勝った」って思わずガッツポーズをする。  やった、これでシノさんをグリグリできる・・・。  でも、いつもならここでシノさんが僕にキスしてくるところなんだけど、シノさんはしてこなかった。 「?」  僕は思わず小首を傾げる。 「どうしたの? シノさん」  シノさんは神妙な顔つきのまま、バツが悪そうにモジモジしている。  その股間は普通にしてても少し興奮しているのがわかるのに、シノさんが何もしてこないのは、明らかにおかしかった。  僕は眉をひそめて、「したくないの? シノさん」と訊いた。  シノさんは即座に「したいよ! したいけど・・・」と言い淀む。  そこまできて、僕はやっと理解した。  そうか。  シノさん、僕が言った「今度は僕がしていい?」の一言を気にしてるんだ。  僕は苦笑いする。 「シノさん、僕が言ったこと気にしてんだね。僕だって、無理矢理シノさんを抱こうとは思わないよ。シノさんが嫌がってるのに」 「え・・・。いいの?」  僕は頷く。  シノさんが僕に抱かれたくないって思ってるのは正直寂しいけど、それがネックになってシノさんと何もできなくなるんじゃ、そっちが嫌だから。 「シノさんの決心がつくまでは、そういうことはしません。誓います」  僕は仰々しく手を挙げた。  シノさんの表情が、目に見えてほっとしてる。  う~~~~ん・・・。そんなに抱かれるのが嫌なのか。  内心、残念感たっぷりだったけど、僕は気分を取り直した。  だって、シノさんをグリグリしたい気持ちはとめられない。 「じゃ、そうと決まれば僕、シャワー浴びてきます。シノさんは、そこのソファーで待ってて」 「え? ソファーで?」 「そ。ソファーで」  僕は意味深な笑みを浮かべると、シノさんの顎を指で撫でて、バスルームに向かった。   <side-SHINO>  千春に言われた通り、俺はソファーに座って千春を待った。  ソファーの前には大きな羽目殺しの窓があって、キラキラと輝く東京の夜景が広がっていた。  まるでホテルの部屋に来たみたいだ。  千春に放っておかれると散らかり放題の俺の部屋と違って、千春の部屋は必要最小限の家具しかないので、余計ホテルのように見える。しかも上質の高級ホテルのような。  こんなところが仕事場だなんて、やっぱ千春は凄いよな。  俺なんか、一生働いてもこんなところに住めないもんな。  はぁ・・・・。  そこまで思って、俺は自分にげんなりとなってしまった。  ああ、俺ってホント器の小さい男だよ。  男の価値は金なんかで決まらないって、わかってるんだけどさ。  それにさっきの一件だって、頭ではわかってるのに、俺は千春を受け入れることが反射的にできなかった。  千春に嫌われたくないのに、身体は凝り固まるばかりで。 「なんで千春を受け入れられないんだよ」  俺は両手でゴシゴシと顔を擦った。  そしてまた、ハァと溜息をつく。  千春は許してくれたけど、こんなんじゃ俺、今に千春に愛想尽かされちゃうんじゃないかな・・・。 「シノさん?」  ふいに背後で声がして、俺は振り返った。  バスローブ姿の千春が、目をパチパチとさせて俺を見ていた。 「大丈夫? 具合、悪い? それとも、待ち疲れちゃった?」  千春が、俺の座ってる前に回り込んで、床に両膝を着いて座る。 「その気、なくなっちゃった?」  眉を八の字にして、不安げに小首を傾げる千春が最高に可愛くて。  俺は千春の両手を取って俺の隣に座らせると、千春にキスをした。  千春が微笑む。  今度は千春の方からキスしてくれたけど、俺がもっとと顔を寄せていくと、なぜか千春は顔を引いた。  あれ?っと思って俺が目を開けると、千春はまた微笑みを浮かべていた。  でも今度浮かべた千春の笑みは、さっきとは違ってちょっとSっけの入った、小悪魔のような微笑みだった。  千春は、俺の鼻筋を指で辿る。  俺は再度千春にキスをしようと身体を寄せたが、千春はふいっと身体をよけて、ソファーの前に立った。 「シノさん、僕のこと、欲しい?」  千春が、俺を見下ろしつつ、バスローブを脱ぎ落とす。 「欲しいの? 僕の身体が」  見上げた千春は、まるでギリシャ神話にでも出てくる神様のように美しくて、でも同時にとんでもなくエロくって、俺はもうどうにかなりそうだった。  俺のあそこが一気に勃起してしまって、俺は思わず「いてて」と呻きながら、ジーンズの前に手をやった。 「ああシノさん、ちょっと刺激、強過ぎた?」  千春が、慌て気味に座って、俺のジーンズのボタンに手をかける。 「うわ、最初に脱いでもらっといてから、やればよかった・・・」  股間が大きくなったせいで、ジッパーが下りにくくなっちまって、二人で四苦八苦してしまう。 「シノさん、これ、一回小さくなんないかな?」 「無理だよ!」  俺は思わず悲鳴をあげた。  だって、俺の前で正座してる千春、全裸の上に勃起してるんだぜ!   「目の前の光景が、刺激的過ぎだよ・・・」  俺がそう言うと、千春がハッとした顔つきをして自分の身体を見下ろした。急に顔を真っ赤にして床のバスローブを掴むと、バッと自分の身体を隠す。  なんだよ! 今更テレてんのかよ!! 「あいててて・・・」  今更ながらに恥ずかしがる千春が益々可愛くて、逆効果だ。  俺は股間を押さえて、ソファーに寝転がった。 「ああ、ちょっと待って」  バスローブを着込んだ千春がソファーに片膝をついて、俺の脚の上に座る。  千春に、やっとのことでファスナーを下ろしてもらい、ジーンズを下着ごと下げてもらう。  元気よく飛び出ててきたソコを見て、二人で大きく溜息をついてしまった。  どちらからともなく、プッと吹き出す。 「色気ゼロだよね」 「ホント、そうだな」 「悪いですけど、僕、前はこんなコントみたいな感じでセックスしたことなんか全くなかったんですよ」 「ごめん。出来の悪い生徒で」 「ホント。困った生徒ですよ」  千春の指が、反り返ってる俺のアソコの裏筋を指で辿った。 「・・・あ!」  いきなり感じてしまって、腹筋がひくつく。 「こんなにおっきくされたら、いきなり入れるのなんて無理じゃない。僕のアソコが壊れちゃうもの・・・」  俺は、千春のエロい言葉にゴクリと生唾を飲み込んだ。  千春が俺とは対照的に、まるで氷の女王様のようなクールな表情を浮かべる。 「だからバツとして、一回出して」  千春はそう言うと舌を大きく出して、ベロリと俺のペニスを舐め上げた。 「ぅうっ!!」  目からの刺激と直接的刺激が、俺を翻弄する。  千春は、まるでアイスキャンディーを舐めるように何度も俺のソコを舐め上げる。  俺の身体が幾度となく跳ね上がった。  でも、わずかに繰り返される刺激は、決定打とはならなくて。  「一回出して」と言う割に、のらりくらりと俺を愛撫する千春に、俺はジレてしまった。 「・・・ち、ちはる・・・」  もっと強く刺激してほしくて、俺は泣きそうな声で千春の名を呼んだ。  俺のモノを舐める千春が、俺の顔を見てニヤリと笑った。  俺の股間が、ジンと疼く。  俺は悟った。  これ、絶対わざとやってる。  俺は、ハァと大きく息を吐き出した。  大きくえぐれた俺の腹筋を、千春の美しい指が撫でていく。 「イカせてほしい?」  俺の頬がカッと熱くなる。  なんでこのタイミングでブラックチハルなんだよ!!  俺がこくこくと二回頷いても、チハルは俺のソコを指で辿るだけだ。 「そんなんじゃダメ。ちゃんとお願いして?」 「お、お願いって・・・・」 「きちんとした大人だから、ちゃんとお願いできるでしょ? イカさせてくださいって」  千春がゆるゆると俺のペニスを扱きながら、俺の顔を覗き込んでくる。  俺は唇を噛み締めた。 「そんなの・・・恥ずかし過ぎるよ・・・」 「じゃ、いつまで経ってもこのままですよ」 「う・・・。千春だって、限界じゃないのかよ・・・」  俺はバスローブの合わせ目から時折覗く千春のソコの目をやった。  確かのソコは、俺に負けないぐらい大きくなっていて。  でも俺を見つめる千春は全然クールな顔つきなんだ。  これって、経験の差なのか?  俺は堪らなくなって、千春の手の上から自分で掴んで扱こうとした。  その手を千春にピシャリと叩かれる。 「シノさんは触っちゃダメ」  俺は思わず泣きそうになった。  男にとって、射精の欲求は何にもまして強いんだ。 「簡単ですよ。一言イカさせてって言えばいい」 「ん~~~」  俺は唸った。  それって、どうしても言わなきゃダメなの?  死ぬほど恥ずかしいんだけど。 「言わなきゃダメ?」  俺がおずおずと訊くと、千春はその瞬間だけ少年のような表情を浮かべて、うんと頷く。   この期に及んで、そんな千春がカワイイって思ってしまう俺はバカだ・・・。 「・・・かさせて」 「ん? 聞こえない」 「イ・・・カさせ・・・て」  まるでAV女優にでもなった気分だ。  あまりの非日常的な恥ずかしさに、首から上がカッカと燃えるような感覚を覚えて、その一瞬、俺はギュッと目をつぶった。  千春が「シノさん、カワイイ!!」と大きな声で言う。  俺の熱くなった頬や唇にちゅっちゅとキスをしてきた。  俺が目をあけると、千春は満面の笑みを浮かべてる。 「ご褒美です」  ご機嫌の千春は、さっきとは打って変わった激しさで、俺のアソコを口で愛撫してくれた。  ジラされていただけに直ぐに限界が来る。 「・・・!!っ、あぁっっ!!」  俺の身体がビクリビクリと跳ねる。  千春は、俺の出したものを全て口で受け止めた。  いつもはそれを飲み込むところだが、今日はそれを手のひらに出してた。  俺は、また何のプレイだよ?!と思って、更に恥ずかしくなったのだが、それにはちゃんと意味があったようだ。  千春は、俺の出したものを潤滑油にして、バックをほぐし始める。 「・・・ん・・・」  少し眉間に皺を寄せて目を閉じる千春が凄くセクシーで、俺はバスローブを掴んだ。  千春がソコを愛撫しているところが、よく見えなかったからさ。  でも寝っ転がった体勢では、うまく脱がせられず。  俺は身体を起こそうとしたが、それに気づいた千春が、俺の身体を空いてる手で押さえた。 「ヤダ、シノさん、起きないで」 「うぅ・・・だって、バスローブ取れない・・・」 「バスローブ?」 「うん、邪魔・・・」  千春が苦笑いする。 「温泉では浴衣、脱がせてくれなかったくせに」 「そ、そうだけど・・・」  千春は、俺を強引にまた押し倒してしまった。  片手だけど、千春結構力があるから、胸を押さえられると本気で起きられない(汗)。  う~ん、今日は俺からの要望は聞き入れないつもりなのか・・・。  千春、やっぱ怒ってるのかなぁ。  千春は俺の身体を跨ぐと、二、三回俺のを扱いて、ゆっくりと俺の上に身体を落とした。 「・・・あぁ・・・」  千春は天を仰いで、大きく吐息を吐き出す。  ううっ、バスローブで肝心のところが見えないよ!!  俺が眉を八の字にしている意味を千春は察したらしい。でも千春は「あは・・・」と笑って、「たまに見えるのがセクシーでいいでしょ?」と言い、腰を揺らす。  きゅっと包まれた俺のアソコは千春の中で擦られる刺激で、あっという間に完勃ちになった。 「・・・ぁ・・シノさん・・・、スゴ・・・」  俺が勃起したのを千春も敏感に感じ取ったみたい。  千春の顔から微笑みが消え、腰を使うことに集中する。 「・・ぁっ、あぁ・・・んん・・・」  千春の身体に汗が滲み、それが窓の外の光に照らされ、頬から首に掛けて肌がキラキラと光った。  凄く、凄く綺麗だよ、千春。  メチャクチャエロいことしてる俺達なんだけど、こう言っちゃなんだが、下から見上げる千春がとても神々しくて。 「千春・・・」  思いあまって俺がそう呟くと、千春はハァハァと息を吐きながらも、俺に視線を合わせた。  快感に捕われた、隙だらけの顔。  その顔が、とても子どもっぽく見えるのは、なぜなんだろう。  そんな千春がいとおしくて、俺は再度「千春・・・」と名前を呼んだ。  千春はゴクリと息を飲み込み、うんうんと頷いた。  わかってるって意味なんだろうか。  俺が千春のこと、たまらなく好きなんだってこと、わかってるって。  前にも、こんなことあったよな。   ── 千春、愛してる・・・。  俺達は両手をギュッと握りあった。 「あぁ・・・シノさん・・・も、ダメ・・・」  千春の掠れ声につられるように、俺達は同時に絶頂を迎えた。
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