相合傘のおまじない

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 *  降り続いた雨は、ハルコが外に出る頃には多少なりとも弱まっていた。 彼女は掌を使って雨の降りようを確かめ、傘を差す必要性は無いと判断した。  ハルコは水溜りがいくつもできたアスファルトを闊歩し、たまたま見つけた彼──アマノに話をかけた。  アマノは右手の折りたたみ傘を閉じ、何か用? と首を傾げる。 「アマノくんに訊きたいことがあるの」  ハルコは人目を避けることができる且つ、雨のあまり当たらない場所にアマノを連れ、彼の了承を得る前に言葉を重ねた。 「あの日のことは覚えてる?」 「あの日?」 「そう。 ミズキ──あなたの彼女( ・ ・ ・ ・ ・ ・)が、相合傘に誘った日のこと」  具体性を増してハルコが告げると、アマノは覚えているよと頷いた。 そしてハルコが訊くよりも先に、アマノは当時を振り返りながら続けた。 「うっかり傘を忘れて、偶然にもミズキと一緒に帰ったんだ。 確かそこからだったかな。 よく話すようになったのは」  懐かしみを含ませて話すアマノに、ハルコは気付かれぬよう唇を噛んだ。 が、そのとき胸裏に湧いた感情を殊更ストレートには伝えなかった。 代わりに質問を追加したのだ。 「折りたたみ傘、いつも持って来てるの?」 「ん、ああ。 もしものためにね」 「だったら、不自然に思わなかった?」 「不自然?」 「そうだよ。 突然、傘が鞄から無くなってるなんておかしいでしょ」 「うーん……ただ単に僕のうっかりだと思ってたんだけど。 その話が何かあったかな」  怪訝に首を傾げたアマノに、ハルコは何でもないと誤魔化し、最後にこんな台詞を残して彼と別れた。 「道を外したおまじないはきっと神様の怒りを買って、長続きはしないんだと思う」
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