桃色の彼女

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「雨ってこんなにいいんだよ」 蛙は一生懸命、皆に雨の良さを伝えました。 そしたら、雨が嫌いって言っていた友達も 「雨がないと水がなくなるから、困るんだ」 と、理解してくれました。 そう、雨は素敵です。 嫌いになるなんて、勿体ないのです。 そんなある日。 蛙は出会いました。 桃色の美しい彼女は、木の枝に居ました。 暫く見惚れていた蛙でしたが、根の傍から見上げる気配に気づいた彼女がふとこちらを見て、微笑みました。 「こんにちは」 「こ、こんにちは」 彼女はこちらに来ることはなく、にっこり笑ってまた空を見上げました。 どうやら、空を見上げるのが好きなようです。 空といえば、雨です。 きっと、彼女は雨を好きなのだろう。 雨を待っているのだろう。 そう思った蛙は彼女とお話したくなって、木を登りました。 彼女の傍まで行くと、彼女は蛙を見てくれました。 「あら、いらっしゃい」 「ねぇ、空が好きなの?」 「ええ、好きよ」 蛙の質問に、彼女はおだやかに答えました。
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