妖精コッパ

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妖精コッパ

人間たちが近寄れない深い森には、ぱっくりと口を開けたような大きな穴がありました。 穴の先には、妖精の住む国が広がっています。 妖精の国は数多くの花が咲き、その花の一つ一つには美しい妖精が住んでいました。 朝をむかえた妖精たちは目を覚まします。 「ふわぁっ」 妖精のコッパは、花を広げ、起き上がりました。 「よくねたな」 コッパは透明の羽根を広げ、空を浮かびました。 「コッパ、おはよ」 コッパめがけて一人の妖精が飛んできました。コッパの友達のジニ―です。 「なぁんだ。ジニ―か、オイラはてっきりフローラ姫かと思ったぜ」 コッパはがっかりしたようにいうと、ジニ―は口を風船のようにふくらませました。 「あなたのような変わり者に、フローラ姫さまが会いに来るはずないじゃない!」 ジニ―はコッパに指差しました。 変わり者と言われるのを、気にしているコッパは、ふきげんな顔をしました。 「ジニ―まで、みんなと同じことを言うなよ……気にしてんだからな」 「あっ、ごめん!」 ジニ―は慌てて口をふさぎました。 コッパはジニ―の反応に、お腹を抱えてわらいました。 「なんて、ウソだよ!」 コッパは逃げるように、空へと羽ばたきました。 ジニ―はコッパにだまされ、かんかんに怒りました。 「ちょっと待ちなさいよ!」 ジニ―はコッパを追いました。 コッパはジニーから逃げる内に、いつの間にか妖精の村に入っていました。 妖精がこちらをみているのもかまわずに、コッパはタルをすりぬけ、妖精の家に窓から勝手に入り、えんとつから出て、妖精たちが買物をするために集まる広場へと逃げました。 おばあさんの妖精が買物をしているにも関わらず。コッパとジニ―が通りぬけ、品物がめちゃくちゃに転がっていきました。 コッパは広場の中央まで空高く飛び、体をくるりと回して、ジニ―に向かって舌を出しました。 「何やってるだよ、のろまだな」 コッパはジニ―をからかいました。 「なんですって!」 ジニ―はコッパをつかまえようと、ぬうように飛んでいきました。 「ジニ―には無理だよ、オイラをつかまえられない」 話の途中で、コッパは赤い舌に巻かれ、地面に落ちていきました。 「つかまえたわ、わたしの将来のおむこさん」 「はなせよケロロン姫、オイラはおまえのおむこさんにはならない!」 カエルの国お姫さまである。ケロロン姫に抱きしめられました。 ケロロン姫はコッパに想いを寄せており、コッパに会うために、妖精の国へと度々おとずれてはコッパに結婚を申しこむのですが、いつも断られるのです。 「もう、照れないで」 「照れてなんかないっ!」 コッパはケロロン姫より、妖精の国のお姫さまのフローラ姫と結婚したいのです ところが、ケロロン姫はおかまいなしにコッパに愛を伝えているのです。 「コッパ、お似合いだわ」 ジニーは嫌味を込めて言いました。 「ジニ―助けてくれよ」 コッパはジニ―に助けを求めました。 「ケロロン姫、コッパをカエルの国に連れて行ってもいいわよ」 「ほんと? うれしいわ」 ケロロン姫は、コッパを抱きかかえたまま、妖精の村を出て行きました。 「ジニ―助けてくれ、さっきのことはあやまるからよ!」 コッパは涙ながらジニ―にうったえました。 しかしジニ―はコッパを見るなりそっぽを向いてしまいました。 コッパに対し怒りがおさまっていないようです。 「いじわる」 コッパは叫びました。 ケロロン姫はコッパを抱えたまま、草むらの中を歩いていました。 「わたしの大切なおむこさんだから、綺麗な服で結婚式をあげたいわ」 ケロロン姫は、コッパと結婚できると思うと心がおどりました。 しかし、コッパはずっとふきげんでした。 「おまえのおかげで、オイラは変わり者よわばりされてんだぞ」  周りから変わり者と呼ばれているのも、妖精以外の生き物に好かれているからです。 「どうでもいいけど、なんでオイラが好きなんだ?」 コッパはケロロン姫に聞きました。 ここまでケロロン姫がコッパに想いを寄せているのが、不思議に思えたのです。 「コッパさまの純粋な心が、とても素敵だからよ」 「オイラの心?そんな理由で好きになってほしくないな」 コッパは心よりも、外見の美しさの方が大事だと思っていました。 フロ―ラ姫が好きなのも、とても美しいからです。 外見が美しくないケロロン姫を好きになれないのです。 「あっ、見たことのない虫!」 コッパはケロロン姫から逃げようと、うそをつきました。 「えっ、どこ?」 ケロロン姫は虫を探そうと、左右を見渡しました。 「今だ!」 コッパはケロロン姫のうでをすり抜け、大空高く飛び上がりました。 「おまえとは結婚できないんだ。じゃあな」 コッパはケロロン姫に別れを告げました 妖精の国に戻る途中で、コッパは考えました。 「なんでオイラはかえるに好かれるんだ?」 コッパは思いました。 妖精のおよめさんは同じ妖精のはずなのに。コッパだけはカエルがおよめさんになりそうなのです。 「こんなの変だ。オイラのおよめさんはフローラ姫のはずなのに!」 コッパはとっさにフロ―ラ姫のいる妖精の城へと向かいました。 妖精の城は、すずらんの花でできており、咲いている白い花の一つずつが城を守る兵士の部屋や、城の者の食事を作るメイドの部屋。 そして一番大きな白い花に、フロ―ラ姫がいました。 コッパは兵士に見つからないように、草かげにかくれました。 「可愛い花だな、オイラの未来のはなよめさんになるだけはあるな」 コッパは、ほおを赤くしていいました。 「フロ―ラ姫はどこだろう、かくれていても、姿を見ることができないな」 コッパは兵士に見つからないよう、草むらの中をくぐり、城の裏側にまわりました。 「ここなら多分見つからないな」 コッパは軽く空を浮かび、大きなすずらんの花びらの間から、フロ―ラ姫を見ました。 フロ―ラ姫は、すずらんのように透き通った白いはだに、白いドレスが似合う美しい姫です。 「やっぱり、オイラのおよめさんはきれいだな」 コッパはフロ―ラ姫と結婚できたら、どれだけ幸せだろうと、むねがどきどきと高まりました。 「このむねの高まりこそ、オイラはフロ―ラ姫が好きなんだな」 コッパは胸に手を当てました。 コッパが空想にひたっていた、そのときでした。 フロ―ラ姫が、外を見ようと、コッパの顔を見ました 「だれ?」 フローラ姫はコッパの方に近づいて来ました。コッパは突然の出来事に、足が動きません 「あの……その……オイラは……」 コッパは大好きな、フロ―ラ姫の前で、完全に石のように固まってしまいました。 コッパの横からジニ―が突然現れ、フロ―ラ姫にあいさつしました。 「こんにちは、お姫さま、お邪魔しました!」 ジニ―は固まったコッパの手をつかみ 急いで城からはなれました。 「何だったのかしら?」 フロ―ラ姫は首をかしげました。 コッパはジニ―と共に、妖精の住みかに帰って来ました。 「あそこは入っちゃいけない、決まりになっているでしょ?」 ジニ―はしっかりいいました。 フロ―ラ姫の住んでいる城には許しが無いかぎり入ってはならない決まりになっているからです。 もしも決まりをやぶればきびしいばつがまっているからです。 「だって、オイラのおよめさんの顔をしっかり見たかったんだよ」 「フロ―ラ姫さまには、結婚する王子さまがいるのよ、コッパよりもずっと素敵な人よ」 ジニ―にあきらめろと言われているようで コッパは嫌な気分になりました。 「今からでも、オイラに心が向くかもしれないだろ?」 「むずかしいわフロ―ラ姫さまは もう王子さまに心うばわれているもの、それにお姫さまと普通の妖精が結婚するなんてできないのよ」 ジニ―にさんざん言われて、コッパはよけいにやる気が出てきました。 「ジニ―の言うことなんか、信じるもんか」 「あっ、コッパ」 コッパは、フロ―ラ姫のもとへ飛んでいきました。 コッパの気持ちは、不安で一杯でした。 フロ―ラ姫と結婚できれば、きっと周りはコッパを、変わった妖精と呼ばなくなるにちがいないと思うからです。 コッパがケロロン姫に好かれることにより、周りから変わった妖精と呼ばれ、落ち込んでいた時のことでした。 コッパはひざに顔をうめ、今にも泣きそう気分でした。 そこにフロ―ラ姫が現れました。 『どうしたの?』 『オイラはカエルの姫に好かれるから 変わった妖精だって、オイラの友達にからかわれた』 コッパはジニ―がはげましに来たのだと思い、フロ―ラ姫に気持ちをうちあけました。 フロ―ラ姫はほほえみ、コッパの肩にそっと手をおきました。 『周りの言うことを気にしてはだめよ あなたはあなたなのだから、周りとあなたはちがっていいのよ』 コッパはふり向くと、フロ―ラ姫が立っていました。 『フロ―ラ姫!』 コッパはあわてて立ち上がったひょうしに、花畑の中に落ちてしまいました。 コッパは花だらけになりながら、起き上がりました。 『だいじょうぶ?』 フロ―ラ姫コッパに手を差し伸べ、コッパはフロ―ラ姫の手をつかみました。 『ああ、オイラならへいきさ』 コッパは花をふり払って、笑いました。 フロ―ラ姫の優しい言葉によって、コッパは元気を取り戻したのです。 そして心のそこから、フロ―ラ姫が好きになったのです。 「たとえ、好きな人がいたとしても、オイラは気持ちを伝えるんだ」 コッパは妖精の城に着き、むねがどきどきしないように、深呼吸をしました。 「フロ―ラ姫、今いくからな」 コッパは城の兵士に変身し、妖精の城に入りました。 コッパの変身は、周りの兵士が見ても決して分かりません。 コッパは兵士の目をぬすみ、フロ―ラ姫のいる、大きなすずらんの花に飛びました。 フロ―ラ姫は、王子さまと一緒にいました。 「あなたと共に、妖精の国をより良い国にしましょう」 「この国の幸せのためにもぼくも力になる」 王子さまは、フローラ姫の手を取りました。 「愛しているよ、フロ―ラ」 「わたしも」 王子さまはフロ―ラ姫と、愛を交わそうとしました。 コッパは見ていられずにとびこみました。 「ちょっと待った!」 コッパはすずらんの花をくぐりぬけ フロ―ラ姫と王子さまはコッパを見ました。 「何者だ?」 王子さまはフロ―ラ姫の前に立ちました。 コッパはへんそうをときました。 「オイラはコッパだ。フロ―ラ姫をおまえに渡すものか!」 コッパは王子さまに指差しました。 「フロ―ラ姫は、オイラと結婚するんだ!」 コッパは言いましたが、王子さまはもちろんのこと、フロ―ラ姫もそんなことは全く知りません。 「何を言っているのだ。フロ―ラは、ぼくと結婚するのだ」 「そうよ、勝手なことを言わないで」 王子さまはフロ―ラ姫の両手をにぎりしめました。 コッパはふきげんそうな顔をして、王子さまとフロ―ラ姫を引きはなしました。 「フロ―ラ姫はオイラのことが好きだから、はげましてくれたんだよな?」 コッパはフロ―ラ姫にたずねました。 しかしフロ―ラ姫は、コッパをはげましたことなどすっかり忘れていました。 「いつのこと?」 「ずっと前にオイラがおちこんでいたとき、フロ―ラ姫はオイラに元気をわけてくれたじゃないか あの日からフロ―ラ姫が好きになったんだ」 フロ―ラ姫は上を見上げ、しばらく考えました。 そして、フロ―ラ姫は軽くうなずきました。 「……あの日ことね思い出したわ あなたをはげましたのはわたしの仕事であって、あなたのことなんて別にすきじゃないわ」 フロ―ラ姫の心ない一言に、コッパはその場に固まりました。 優しいと思っていたフロ―ラ姫に冷たく言われ、コッパは一言もしゃべれませんでした。 「だれか、この無礼者をろう屋に入れてちょうだい!」 フロ―ラ姫が大声で叫ぶと、三人の兵士がかけつけて、コッパを牢屋へと連れて行きました。 空は暗くなり ジニ―は、コッパが帰って来ないことが心配になりました。 「おそいなコッパ、何してるんだろう?」 ジニ―は花びらの上で、つぶやきました。 「大変だ!」 一人の妖精が、すごい速さで飛んできました。 「どうしたの?」 「コッパが……妖精の城にしのびこんで、つかまったんだって!」 妖精の話に、ジニ―はコッパの言葉を思い出しました。 「もしかしたら……」 ジニ―はいてもたってもいられずに、妖精の城へといきました。 妖精の城の前は、妖精たちが大勢集まっていました。 妖精の国で、いけないことをした妖精に対し,罰を与えるためです。 コッパはしばられており、コッパの横にはフロ―ラ姫、王子さまが並んでいました。 「この妖精は、わたしの部屋にかってにはいり、王子さまと一緒にいる時間をじゃまをした罪がある」 「オイラはただ。フロ―ラ姫に気持ちを伝えに来ただけなのにな」 コッパは言いましたが、みなはコッパの話に耳をかたむけようともしませんでした。 「コッパ!」 ジニ―は妖精たちのむれをくぐり、コッパの顔がよく見える一番前の列に来ました。 「コッパ、だいじょうぶ?」 ジニ―がといかけると、コッパは顔を上げました。 「ジニ―助けてくれよ!オイラはただ。フロ―ラ姫に気持ちを伝えたかっただけなんだよ!」 コッパはジニ―にうったえました。 フロ―ラ姫はコッパを、するどい目つきでみました。 「言葉がすぎるようなので、この妖精には永遠に固まってもらいましょう」 「やめてくれ、オイラはそこまで悪いことはしてない!」 「カチンコチンになれ!」 コッパの話を無視しフロ―ラ姫が魔法を放ちましたが、コッパの身体は赤い舌にまかれ、地面に落ちました。 「だいじょうぶ?」 コッパを救ったのは、ケロロン姫でした。 「なんだケロロン姫か、いちおうありがとうな」 コッパは、ケロロン姫にお礼を言いました。 「おしおきのじゃまをした罰は大きいわ、くらいなさい!」 フロ―ラ姫は、かんかんに怒りながら、固くなる魔法を放ちました 「コッパさま、あぶない!」 ケロロン姫はコッパをかばい、フローラ姫が放った固くなる魔法を全て受けました。 ケロロン姫は地面にたおれ、完全に動かなくなってしまいました。 「ケロロン姫!」 コッパはケロロン姫に呼びかけますが、ケロロン姫は何もしゃべりません。 「罪をおかせば、そうなることを覚えておきなさい」 フロ―ラ姫は王子さまと手をつなぎ、城の中へともどっていきました。 妖精たちも、ジニ―もコッパのことが気にかかりました。 コッパは人目を気にせずに泣いていました。 「どうして、オイラのために」 ケロロン姫が石のように固くなり、しゃべらなくなったからです。 コッパの心の中には、ケロロン姫と初めて出会った日のことが、よみがえりました。 コッパが足をけがして飛べなくなっていた時に、ケロロン姫がコッパの足を治したのです この日をきっかけになり、ケロロン姫のしつこい告白が始まったのです。 「オイラは好きになる相手を、まちがいたみたいだ」 コッパは、気がつきました。 外見の美しさ。 うわべの優しさより。 人を真剣に想う心の美しさ。 本当の優しさのほうが大切だということを知ったのです。 「オイラも分かっていた。ケロロン姫がオイラのことを真剣に好きだってことを。 だけどオイラは周りに認めて欲しくて、どうしてもフロ―ラ姫のことを好きにならなきゃいけないって思ったんだ」 フローラ姫が好きな気持ちは、周りのことを気にするための嘘で、本当はケロロン姫が好きなのです。 コッパはようやく自分の本心に気付きました。 「今までひどいことを言ってごめんな」 コッパはケロロン姫をしっかりと抱きしめました. 「ケロロン姫、オイラの名前を呼んでくれよ!」 コッパの涙が、ケロロン姫のほおに落ちたその時でした。 ケロロン姫の体が、黄色く光ったと思えば、ケロロン姫の指は少しだけ動きました。 コッパの強い想いが、ケロロン姫にかかっていた魔法を解いたのです。 ケロロン姫は顔を動かし、コッパをみました。 「ありがとうコッパさま あなたの愛のおかげで、わたしはまたこうして、あなたとお話できるわ」 「よせよ、てれるじゃないか」 コッパははずかしそうにいいました。 「コッパさま、大好きです」 「へへっ、オイラもだよ」 コッパはケロロン姫を、強く抱きしめました。 妖精と他の生き物の深い絆が引き起こした奇跡に、周りからは大きな拍手がわきました。 こうして、コッパはケロロン姫と結婚することになりました。 変な目でコッパを見ますが、コッパは気にしません。 なぜなら、自分の気持ちに正直になったからです。 コッパは外見ではなく心の美しさでケロロン姫を選んだのです。 「ケロロン姫、幸せになろうな」
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