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38.立ちはだかるもの
5月1日の金曜日。明日から連休だ。花はジェイのことが気になって早朝出勤をした。連休の間は旅行だ。何かあっても駆けつけられない。課長は心配は要らないと言ったが、それでも頭から離れない。
ジェイが出勤するころにはメールは全部処理して資料もあらかたフォルダに分かりやすいように突っ込んだ。
これは上の者の責任だ。もし何かあった場合、自分が資料を握り込んでいれば業務は止まる。誰もが分かるところに。それが鉄則だ。
「おはよう! 花さん、早いね!」
「休む前にいろいろやることがあるからさ。心置きなく休みたいし」
「すっかりチーフの自覚が身に付いたな」
「課長、褒めないでください。まだまだだって自覚ありますから」
「お前はいいチーフになるよ」
当たり前のように言ってくれた課長の言葉が嬉しい。それを表に出すのが下手な花はいつもなら黙るか皮肉を言うかしかない。けれど今日は素直に喜んだ。
出社しているチームメンバーに保存してある資料について説明をした。他のチームにも後々必要となるものについてはメールで知らせてある。もちろん他のチーフたちからも同じようなものが来ていた。
昼はチームで食べに行った。
(親になるって、変なもんだな)
先週までと自分が変わっている。みんなが子どもに見えてしょうがない。
(俺って単純)
哲平より単純だったらどうしよう、などと考えて(有り得ない!)と結論を出した。
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