38.立ちはだかるもの

2/18
271人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
  「どうした?」  夕方、目の前に立った花を手を止めて課長が見上げた。 「今日はジェイの病院、どうするんですか?」 「先週行ってるからなぁ。それに今日は俺は少し上がるのが遅いんだ。ジェイには言ってある。ここで待ってるって言ってたよ」 「連休になるのに大丈夫なんですか?」  全部を知ってしまったジェイが気がかりだ。 「俺も念のために連れては行きたいんだが。今日は落ち着いているから」 「落ち着いてるのが心配なんです。俺、連れてってもいいですか?」 「お前が?」 「三途さんと交代で付いてくって言ってたでしょ? 俺、行きたいです」  課長が考え込んでいるのが分かる。 「だめですか?」 「いや。助かる。頼んでもいいか? 少なくとも全部を知ったことを友中先生に伝えたい」 「分かりました」 「ジェイ、俺とデートだ」 「え、あの、なに?」 「デート」  七生や桜井がいたら飛びつきそうな言葉。いないからこそ言うのだが。 「花さんには真理恵さんがいるでしょ」 「ばーか、お前の病院に行くの。課長のOKもらってある。終わったらお前んとこに送ってやるから」 「でも今日は行かないって」 「なんだ、俺と行くのがいやか?」 「そうじゃなくて」  ジェイがチラッと課長席に目をやったのを見逃さなかった。 「そうか、俺じゃ頼りないってんだな?」 「違うよ!」 「じゃ、支度!」 「……はい」   
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!