36.いよいよ

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   しばらく考えてみる、あの時の自分。今のジェイと自分。 「共有してくれる相手がいたら……俺も変わってたかな」 「花くん、道場に行こう!」  急に言い出した真理恵に引っ張り上げて立たされた。 「道場って……」 「遠野師範に会おうよ。今の花くんは濁ってる。水を見に行こう」  久しぶりの道場は清々しくてぴんと張り詰めたものを感じさせてくれた。 「久しぶりだ。お前にはいつもそう言っている気がするが」  師範が笑う。 「すみません」 「元気なのは聞いているから。着替えるか?」 「はい!」  道場着を着る。切り替わる、自分の中の何かが。余計なものが消える。今はこの稽古に集中する時だ。 「お願いします!」  対峙する遠野師範の目に敵意は無い。深さを感じる。広がりを感じる。そこに思い切って飛び込んだ、きれいに投げられるために。  何度も繰り返す、きれいに着地することだけを考える。身を守り、誰かを守るために稽古をする。  合気道は喧嘩じゃない、格闘じゃない。いかに『護る』か。 「ありがとうございました!」  互いに礼をした。 「良かったよ、今日のお前。最初は重かった。躊躇いを感じた。でも途中から動きが軽くなった。自分を流れに乗せていた。今はあれがどう見える?」 [静水] 「……変化するために心を静かにする。水の中身は変わっちゃいないです。けど穏やかにそれを受け入れる。それも自分だから。そして次の変化に備えている」 「いいね、その考え方。変わったね、花は」 「はい……来て良かったです。今、また変わったような気がします」 「そうか。いつでもおいで。あの字を見るために」   
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