37.繋がっていくもの

5/8
前へ
/77ページ
次へ
   バカな質問をする花に、夢が立ち止まって微笑んだ。 「宝物が増えるわね、花」  そばの椅子にどさっと座り込んだ。 「俺、どうしてたらいい?」  父がそのそばに座った。 「包んであげなさい、真理恵ちゃんを。それが赤ちゃんに伝わるよ。そうか、花がダッドになるんだね」 「ダッド、俺、『お父さん』がいい」  まるで大きな決意を込めたような言い方に真理恵が笑い始める。止まらなくなる。 「マリエ! 興奮しちゃだめだ!」 「笑うのはいいことなのよ、花。マムが笑うと赤ちゃんも笑うの。一番初めに聴覚が育つのよ。音楽を聞かせてあげなさいね。いろんな曲を」 「分かった」  ひたすら母に頷く花を、真理恵は愛おしく感じる。 「花くん。きっといいお父さんになるよ。『お父さん』でいいのね?」 「『お父さん』がいい、マリエ。それがいい」  事態に実感のない花が、それだけにはしっかり拘っていた。それも可笑しい。 「真理恵ちゃん、好きなものだけ食べてなさい。食べたくない日は食べなくても大丈夫。時間も気にしないこと。伸びやかに過ごしなさいね。花、食事は無理強いしちゃダメよ。高いところにある物はあなたが取ってあげて。背伸びをするのはすごく体に負担をかけるから」 「私はゆめさんにそんなことをさせなかったよ」  どんなアドバイスにもひたすら頷く。   
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加