274人が本棚に入れています
本棚に追加
バカな質問をする花に、夢が立ち止まって微笑んだ。
「宝物が増えるわね、花」
そばの椅子にどさっと座り込んだ。
「俺、どうしてたらいい?」
父がそのそばに座った。
「包んであげなさい、真理恵ちゃんを。それが赤ちゃんに伝わるよ。そうか、花がダッドになるんだね」
「ダッド、俺、『お父さん』がいい」
まるで大きな決意を込めたような言い方に真理恵が笑い始める。止まらなくなる。
「マリエ! 興奮しちゃだめだ!」
「笑うのはいいことなのよ、花。マムが笑うと赤ちゃんも笑うの。一番初めに聴覚が育つのよ。音楽を聞かせてあげなさいね。いろんな曲を」
「分かった」
ひたすら母に頷く花を、真理恵は愛おしく感じる。
「花くん。きっといいお父さんになるよ。『お父さん』でいいのね?」
「『お父さん』がいい、マリエ。それがいい」
事態に実感のない花が、それだけにはしっかり拘っていた。それも可笑しい。
「真理恵ちゃん、好きなものだけ食べてなさい。食べたくない日は食べなくても大丈夫。時間も気にしないこと。伸びやかに過ごしなさいね。花、食事は無理強いしちゃダメよ。高いところにある物はあなたが取ってあげて。背伸びをするのはすごく体に負担をかけるから」
「私はゆめさんにそんなことをさせなかったよ」
どんなアドバイスにもひたすら頷く。
最初のコメントを投稿しよう!