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「お疲れさまです。」
「あ、お疲れさまー」
「お疲れさまでーす。」
19歳の私は進学もせず、定職にもつかず、ショッピングモールのパン屋さんでアルバイトをしていた。
バイトが終わり、先輩達と裏口の警備員室の前で退店の手続きをしていた時
「あれ?このワンちゃんどうしたんですか?」
警備員室の前に置かれた小さなダンボールの中にその子はいた。
「あ、なんか屋上の駐車場を1人で歩いてたらしいよ。店長が見つけて保護したんだってさ」
「へぇ、店長優しいですね。可愛いワンちゃん」
先輩が微笑みながら優しくワンコを撫でる。
私はその間一言も言葉を発することがなく先輩と警備員さんのやりとりを右から左へ流しながら、ただひたすら運命的な何かを感じていた。
その子は、少し薄汚れてはいたが白くモッフモフ毛に三角の耳は半分たれている。
まるで白クマやパンダのぬいぐるみのようなその子はつぶらな瞳でジーッとこちらを見つめていた。
(や、やばい、、くそかわいい、、今すぐつれて帰りたい)
無言で先輩を真似て優しくナデナデナデナデ。
人差し指を差し出すと甘噛みされた。
(痛い、けどかわいい、、、、)
「こないだも茶色い子犬何匹かダンボールに入って居ましたよね?」
やっと出た一言。
「いたいた、その子たちはみんな引き取り手見つかって連れていかれたよ」
「こないだいたばっかりだから今回は中々里親見つからないかもね」
っと先輩は言っていた。
この前の子犬達には目もくれず触りもしなかった私が
何故今回はこんなにも心惹かれたのか、、
それは本当に不思議な感覚だった。
「ワンコまた明日ね!」
名残惜しくはあったが、里親が見つからず明日もまた会える事を祈りながら私は帰宅した。
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