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嗚呼! スパイシー! 私を痺れさせないで!
霧が濃いある日、モデナを抜けた六郎とフィオナは次の町を目指しながら谷合の道を歩いていた。
「この馬車広くて快適~」
「お前も少しは運転しろよ」
二人はレースの賞金で馬車を買っていた。
「だって私運転方法知らないし」
「俺も知らんが無理やり運転してるんだぞ」
「じゃあいいじゃん」
「よくないぞ、だいたいこんな視界の悪い日に運転なんて危ないからやりたくはないんだが」
そんな言い合いをしているとなにやら前方から悲鳴のようなものが聞こえてくる。
「助けてくれ!」
道の先から小太りの男が走りながらこちらへ向かってくるのが見えた。
「なにかあったのか?」
「見て、あの人怪我してる」
走ってくる男をよく見ると、深くはないが腕や足に斬られたような傷がありとても穏やかなことが起こっているとは思えない様子であった。
「野盗にでも襲われたのか?」
六郎が警戒し手裏剣に手をかけた瞬間、突然走っていた男の体が分解されるかのように分断される。
「うぎゃあ!」と小さく悲鳴を上げて、男の体は地面に散らばった。
「うわあ! グロっ! おえっ!」
フィオナが恐ろしそうに口を押える。
「なにが起きた!? いきなり体がバラバラになったぞ!?」
二人は馬車を止めて男が逃げてきた方向を見る。すると何者かが霧の中に隠れているのが見えた。
「なにかいるぞ! 霧でよく見えんが」
「なにをされたの? 人をバラバラにするなんて魔法聞いたことないよ」
フィオナは眉間にしわを寄せて馬車の中に隠れこむ。
「霧の中になにかいるなら俺達にある程度近づかないと攻撃できないはずだ、待つとしよう。頭はだすなよ」
二人は外を警戒しつつ馬車の中にこもった。
それから十分ほど経過するも、馬車に対して攻撃してくるそぶりはない。
「馬を歩かせるか、馬車を動かせば敵もなにか動くかもしれない」
「えっ、それって馬が攻撃されたりしない?」
「その可能性は低いだろう、敵が野盗の類なら馬車を運べる馬はなるべく殺したくないはずだ」
そう言って六郎は馬に鞭を打ち、ゆっくりと歩かせる。
二人は馬車の中にかがみこんだまま霧の中を注視する。
「霧の中とはいえ近づいたり動いたりすれば姿が見えるかもしれない。よく見張れよ」
「野盗ってことは複数いるかもだよね? やだなぁ」
「やつらの飛び道具を考えると少なくとも五人以上はいると思うが、なにか変な匂いがしないか? ズリズリと変な音も聞こえるぞ」
違和感を感じ六郎が問いかけると同時にフィオナが怪しい影を発見した。
「あっ! あそこにだれかいた!」
「どこだ!?」
六郎が場所を確認しようと動いた瞬間、馬車が大きく揺れる。
「なんだ!?」
「ブヒヒーン!」
「馬が鳴いてる!?」
二人が慌てて馬に目をやると、その足元から数匹のコブラが噛みついていた。
「なにあのヘビ!?」
「まずい! 馬車につかまれ!」
六郎が叫んだ瞬間に馬は倒れこみ、激しい衝撃が馬車を襲う。
「うわっ!」
バネに弾かれるかのようにフィオナは馬車から放り出された。
「ぐえっ!」べたりと地面にぶつかりフィオナは背中を強く打つ。 「いたた……」
「早く起きろ! 攻撃がくるぞ!」
六郎が叫んだ瞬間、霧の中からいくつもの謎の物体が飛来する。
「ひいぃッ!」
フィオナは腰が抜けたのか立ち上がれずに腕で顔をガードする。だがすぐそばにある惨殺死体が、それは気休めにしかならないと言っていた。
「仕方ねえな!」
六郎は手裏剣をいくつも投げつけて謎の物体をはじき返した
「早く乗れ!」
「ひいっ!」
ガクガクと怯えながらフィオナは馬車に転がりこむ。
「六郎、ありがとう……」
「気にするな、それより敵の正体を掴まないことにはどうにもならん」
六郎はそう言いながら馬に噛みついたコブラを手裏剣で始末していく。コブラ達はあっけなく絶命した。
「なぜコブラがこんな場所に? それにさっきからおかしな匂いが漂ってるな。調べてみるか」
六郎はカギ縄を取り出して、切断された男の死体に向かって投げる。
「なにする気?」
「調べるんだよ、死体を近くで確認すればなにかわかるかもしれない」
六郎は死体の切断された腕を引っ張り、馬車の中に持ち上げた。
「うっ、グロ!」
滴る血液にフィオナは目をそらす。
「きれいに切断されてるな、この切り口は刃物に違いないだろう。魔法だとこういう風に切断は可能なのか?」
「多分無理だと思うけど、てゆうか断面こっちに向けないでくれない?」
「これもなにか匂うな」
「なにが?」
「かすかだが馬が襲われる前に感じた匂いと同じものを感じる。おそらくコブラについていた匂いだとは思うが」
二人は再び馬車から顔を出し霧の中を確認する。
「でもどうする? 馬が死んじゃったけど」
「安心しろ、まだ死んじゃいないさ。コブラの毒は神経毒だから完全に死ぬまでにはまだ時間がある」
「えっ、最終的には死ぬならまずくない?」
「いや、おそらく敵は解毒薬を持っているはずだ。そうじゃなきゃ馬を狙うのは利口じゃないからな、しかしこのまま長期戦を続けるのはこっちが不利だ」
六郎は馬車から降りて馬に近づく。
「なにやってんの! 狙い撃ちにされるよ!」
「落ち着け、敵の攻撃を誘ってるんだ。これは介抱するふりだよ」
六郎が言い終わるとともにいくつかの風を切る音が霧の中を進んでくる。
「来た!」
額に汗を浮かべるフィオナ、対照的に六郎の顔はまるで攻撃に気が付かないかのように冷静であった。
「甘いぜ!」六郎は飛来する物体をすべてキャッチする。 「残念だったな、投げつけるならもっと見づらい武器がいいぜ」
六郎は受け止めた武器を確認し始めた。
「なんだっけこれ、見たことあるな」六郎は首を二回ほどひねると合点がいくという風な仕草を見せる。 「ああ思い出した、チャクラムだなこれ」
「なにチャクラムって?」
「ブーメランみたいに回転させて投げる武器だ。俺の世界の武器ではあるが、これを使っているやつらとなるとだいぶ絞られるぞ、それにこのコブラ達から推測すると」
六郎はそう言って口笛を吹き始める。すると、ズリズリと小さくなにかが這うような音が聞こえる。
「この音は、もしかしてコブラが近づいてきてるの?」
「そうだ、今俺がこっちに引き寄せてる」
まもなく、濃霧の中からコブラ達がのそのそと姿を現して六郎の前まで現れた。
「六郎コブラから離れたほうがいいんじゃ」
「大丈夫だ、今の口笛はコブラを呼ぶ音色だ。演奏者を攻撃することはない、そして」六郎は霧の中へと手裏剣を投げていく、すると何人かの男の痛がる声が聞こえた。 「この方向にコブラを操っているやつらがいるわけだ」
「ええっ!? すごいけどなんでそんな技術をもってるの?」
「俺の仕事上いろいろ技術が必要でな、これも以前他国を廻って得たものだ」
六郎は再び口笛を吹き、コブラ達に互いに噛みつかせる。しばらく経つとコブラ達はおとなしくなっていき、それと同時に霧の中から野盗らしき浅黒い肌の男達が現れた。
「バクシー死! ぶち殺してやるぜバクシー死!」
男達は怒りの形相を浮かべながら六郎に向かって走ってくる。
「やはり貴様らか、インド人!」
六郎は剣を抜いて構えた。
「なに? インド人って」
「俺の世界に存在する主にヒンドゥー教を信仰するやつらだ、おおかた生活に困ってこっちに流れてきたんだろうが」
「アジア人か貴様ぁ! ヒンドゥー乱舞!」
インド人達は剣を振りかざし六郎に斬りかかる。
六郎もそれを打ち返し、激しい打ち合いが始まった。
「貴様、俺達の正体に気が付いていたな! なぜわかった!?」
インド人達は剣を振りながら激しく問いかける。
「霧の中から襲撃ってのは理に適っているが、スパイスくささが隠せていなかったようだな、カレーちゃんよぉ!?」
六郎はインド人達を煽りながら全て打ち返していく。
「バクシー死! ふざけたことを!」
インド人達の剛剣が六郎を弾き飛ばした。
「うおっ!」っと後ろに吹き飛びゴロゴロと転がりながら、六郎は体勢を立て直す。 「さすが人殺しは慣れてるみたいだな、お前らは『犯罪者』のカーストだろ?」
「その通りだ、それはつまりお前達が生き残る術はないということ!」
インド人達は剣を振りかざしながら六郎に向かって走ってくる。
「人殺しの経験なら俺だってある!」
六郎も剣を構えて待ち構えた。しかし、持ち上げた腕に違和感を感じる。
「腕が軽い? いや、剣がなくなっている!?」
六郎は驚き振り返ると、一人のインド人が六郎の剣を持って間合いの外へ逃げていくのが見えた。
「俺は『泥棒』のカースト、盗みのプロフェッショナルだ」
泥棒のインド人は剣を構えて他のものと挟み込むように六郎を狙う。
「そういうことだ! さぁ大人しくバクシー死!」
危うし! 六郎の頭上にいくつもの剣が迫る!
「危ない六郎!」 馬車の上からフィオナは弓矢を構えて狙いをつける。「当たれ!」
フィオナはインド人達めがけて矢を連射した。しかしインド人達はよけるそぶりも見せようとしない。
「えっ!? なんで!?」
唖然とするフィオナ、しかしインド人達は矢が体に刺さったまま涼しい顔をしていた。
「おやおやおやぁ? なにか刺さってるかな?」
「なんで効かないの!?」
驚くフィオナ、その光景を見ていた六郎が口を開く。「まさか、こいつら全員サドゥー(苦行)の心得があるのか!?」
それを聞いてインド人達は笑みを浮かべた。
「その通りだよ、俺達はサドゥーに慣れている。それゆえに体のどこが弱点で、どこにダメージを受けても死なないかぐらいは知っている! さぁ、食らえ!」改めてインド人達は剣を振り下ろす、しかし六郎はそれを素手で受け止めては流していく。 「馬鹿な! 剣を素手でいなすなど!」
六郎は次々剣を受け流し、包囲網から抜け出した。
「やれやれ、あまり得意じゃないが成功してよかったぜ」
フィオナの前に立ちふさがるように六郎は逃げ、拳を構える。
「剣もないのにまだやるつもりか?」
「当たり前だ、むしろお前ら剣を持ってるくらいで勝てると思ってるのか?」
「なに?」とインド人達の眉間にしわが寄る、その瞬間数人のインド人が悲鳴を上げる。 「ぐああああ!」
悲鳴を上げて倒れる数人のインド人、その腕や足が見事にへし折られているのに気が付く。
「なにをした!?」
「剣を取られたんでな、残念ながら一思いに切断してやれなかった」
六郎は手を手刀の形にして、既による打撃により骨折させたことを示す。
「チイィッ!」引き下がるインド人達、攻撃の意思をなくしていないような目で霧の中へと下がっていく。
「倒した!?」
「まだだ、油断するなよ」
二人が霧の中を見ていると、再びインド人達が現れる。
「驚いたな、剣を持った相手の骨を折っていくなんて芸当はよ」
インド人達は六郎を警戒しつつ、距離を詰める。
「また来たってことはもう一度食らいたいってことでいいか?」
「ほざけ!」
インド人達は剣を振りかざし、六郎に斬りかかった。
「無刀取り!」
六郎は迫る剣を手のひらではさんでいなそうとする。しかし、その時が不思議なことが起こった。
「ぐああっ!」
「六郎!」
突如六郎の左肩が斬りつけられ、六郎は大きくよろめいた。
「どういうことだ!? 前から斬られたはずなのになぜ横からも!?」
六郎が左右を警戒するも敵の姿はない。たしかにインド人達は六郎の前方にいるのが視認できる。
「バクシー死! お前は終わりだ、このまま死んでいくがいい!」
インド人達は再び剣を振り上げる。六郎は慌てて印を結び始めた。
「なにか変だそ? 風遁、暴風!」
六郎が印を結ぶと、突風が吹き荒れる。
「うわーっ! なんだこの風は!?」
インド人達が顔を覆って土埃を避けようとする中、六郎は異変を感知した。
「なんだ!? やつらの姿が揺れている!? まるで揺れる水面のような、まさか……!」
六郎は四方八方に手裏剣を投げつける。するとガラスが割れるような音が辺り一面に響き渡った。
「これは!?」
その光景にフィオナが驚いて声を上げる、霧の中とはいえ視認できるところには大量の割れたガラス片が散らばり、先ほどまで誰もいなかった場所にインド人達が現れたのだった。
「やはりそういうことか、お前らの中に『鏡職人』のカーストが混じってるな? その鏡を素早く設置することで正しい位置を誤認させながらこの闇討ち戦法を可能にしていたわけか」
「今更気が付いてももう遅い! この勝負は俺達の勝ちだ!」
インド人達は急に慎重に六郎へと距離を詰めてくる。先ほどまで突撃するような雰囲気とはうってかわった様子が奇妙であった。
「なんのつもりだ? 今度は何を考えている!?」
六郎が後ずさり間合いを図ろうとすると、突如足元が崩れ落下する。
「落とし穴だと!? いつの間に!?」
「六郎! 危ない」
六郎が穴の底に落ちると、次々とコブラが投げ込まれた。
「ハハハハハ! 鏡による攻撃など時間稼ぎにすぎん! 『穴掘り』のカーストともなれば短時間で敵の足元に穴を掘ることなど容易!」
「六郎ーーっ!」
無慈悲にも、六郎の体は無数のコブラに埋もれてしまった。
「このコブラ地獄から逃れたものはかつていない、これでジエンドだ」
「そううまくいくと思うか?」
穴の中から六郎の声が響き、周囲がざわめく。
「なに!? あれだけのコブラに噛まれれば短時間で心臓が止まるはず! なぜ生きている!?」
インド人達は落とし穴を覗き込んだ。
「残念だが俺には毒は効かない、体に抗体があるんでな。噛まれても少し痛いだけだ」
六郎はそう言いながら穴の中から脱出しようと壁を上る。
「そうか、ところで毒以外にも強いかな?」
不敵にインド人達が笑いを浮かべる。
「なんだと? なにを言っている?」六郎が警戒し穴を上る手を止める、体を見ると噛みついていたコブラの腹部がなにかを飲み込んでいるように膨らんでいることに気がついた、嫌な予感が脳裏をよぎるには十分であった。 「この匂いは、まさか!?」
瞬間コブラの体が爆発し、穴の中から爆風が飛び出した。
「六郎--っ!」
「ハハハハ、いくら毒に耐性があろうとも爆発に対する耐性をつけることなどできはしまい!」
フィオナの叫びも虚しく、インド人達が馬車へと近づいてくる。
「あとはこの女だけか、さっさと殺して荷物を奪うとするかな」
「来ないで!」
フィオナは矢を構えて威嚇する。
「無駄だとわかっているだろう? おとなしく馬車から降りろ、そうすれば一思いに殺してやる」
インド人達はコブラをけしかけて馬車を登らせる。
「ひいっ! 怖い!」
「待て! お前ら気が早いんじゃないか?」
六郎が穴の中から這い出し、その声にインド人達は驚愕する。
「馬鹿な! どういうことだ!? 何故生きている!?」
「爆発で耳が痛いから少し静かにしろ」六郎はよいしょと立ち上がると、体についたコブラの破片をはたいて取っていく。 「クソ、牙が刺さってる」
「なにをしたんだ! 答えろ!」
「簡単な話だ、このコブラの毒は筋肉を弛緩させる神経毒、俺は一時的に体内の抗体を停止させわざと毒を受けた」
「まさか、筋肉を柔軟にすることで爆発に耐えたというのか!?」
「そういうことだ、あとは裂傷にさえ気を付けていれば至近距離の爆発だろうと致命傷は負うことはない」
「六郎! すごい!」
フィオナが感嘆の声を上げた。
「そんなめちゃくちゃがまかり通るか!」
「めちゃくちゃなのはお前らの方だ、『犯罪者』のカーストだけの集団ならまだしも、真っ当な職業のカーストまで野盗に成り下がるとは、異教徒とはいえ許せんぞこの背教者どもめ!」
六郎は怒りを乗せた声でまくしたてる。
「それが貴様らになんの関係がある! 神とてこちらの世界までは見ていないだろうよ!」
インド人達は剣を振り回してコブラと共に六郎に攻撃をしかける。
「手裏剣連打!」
六郎はドスドスとインド人達に向けて手裏剣を放つ、だがインド人達は依然涼しい顔をする。
「効かないなぁ、さっきも言ったように俺達は体のどこにダメージが通るのかを熟知している、おまけにこれだけ視界がはっきりしている距離ならそっちの飛び道具の当たる場所は調整できるんだよ!」
「だったらこれなら!」
背後からフィオナが矢を連射する。その矢もドスドスとインド人の体に突き刺さった。
「だから効かないと言っているだろう! 終わりだ、死ね!」インド人達が六郎を取り囲み剣を振りかざした瞬間、急なめまいが襲う。 「なんだ、急に頭が……?」
そのままインド人達は膝をつき、地面に突っ伏すものもあらわれた。
「まさか」とインド人達は刺さった矢を引き抜く。 「これはコブラの牙!? 貴様らなんてことを!!」
「飛び道具が効かなくてもさすがに毒なら効くでしょ?」
「ふふん」とフィオナは鼻を鳴らして、ドンと馬車の床を叩いた。
「まずい! 解毒薬を飲まねば!」
インド人達が痺れる手で薬を取り出そうとするも六郎がそれを奪い取っていく。
「悪いがこれはもらうぞ、うちの馬が気絶してるんでな」
「そんなぁ、後生だ……!」
「野盗に堕ちたものはともかく、お前らは元々のカーストに従っているものもいるな、それは評価してやろう」
インド人達のうち幾人かが活路を見出したとばかりに顔を輝かせる。
「そうだ! 俺達は元々『犯罪者』のカーストだ! これでしか生きていけねえんだよ!」
「だったらそのカーストが捕まればどうなるかは知ってるよな?」
六郎は口笛を吹いてコブラを操り始めた。
「やめろ、やめてくれええ!」
痺れながら、男達はゆっくりとコブラに飲み込まれていった。
インド人達が全てコブラに飲み込まれた後、食べ過ぎで動けなくなったコブラを六郎は始末していった。
「かわいそうだがここで殺しとかないと他の人間が噛まれるかもしれないからな」
「でもこのまま置いておくのは不気味じゃない? さっきの穴に入れて土かけとこうよ」
「それもそうだな、さすがにこれは気持ち悪いか」
人間を飲み込んだコブラ達はまるで風船のようにひどく膨らんでいた、事情を知らなければ事件にしか見えないだろうことは容易に想像できる。
二人はコブラの死体をゴロゴロと転がして穴に落としていった。その時、なにやらまたしても怪しげな存在が二人に近づきつつあることに六郎は気が付いた。
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