異文化! 人面石の街!

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異文化! 人面石の街!

 ここは「モアイミ」、六郎達の世界からモアイ文化が持ち込まれ独特の進化を遂げていた。街の人間はモアイに祈りモアイを建てる。そんな日々を続けていた。 「ここでいいかな、よいしょっと」  小型のモアイを一人で運ぶ身長二メートル七十センチの大男、小型といってもそのモアイは五メートルはあった。重量二十トンを超えるそのモアイを運ぶ男は諸君らの知る男、清海であった。 「今日の仕事はこれで終わりかな?」  清海は汗をぬぐいながら言った。 「いやー、お疲れ様。清海さん」  亀の甲羅を着た男が歩いてくる。 「おっ、ナタイさん。飯と寝る場所をもらってるからな、これくらいお安い御用だ」  ナタイと呼ばれたこの男、この村におけるモアイ建設責任者であった。 「この小型のモアイでも大の大人が何人も必要だからね、一人で運んでしまうなんてやっぱり清海さんはすごいよ!」 「まぁ、それほどでもあるがな」 「そうだ、仕事が終わったならこれ飲みなよ」  そういうとナタイはリュックから小さなモアイを取り出した。 「ほら、モアイジュースだよ。この村の名産品なんだ」  二十五センチくらいの長さのモアイはどうやら水筒のような役目を果たしているらしい。 「どうやって飲むんだ?」 「モアイの下に蓋が付いてるから、それを外して飲むんだよ」  清海がモアイの下を見てみると確かに蓋が付いている。 「じゃあありがたくいただくよ」  ごくごくとモアイに口をつけて飲んでいく。 「うん、うまい。甘くてパチパチするがこれなんのジュースなんだ?」  清海は不思議な味に好奇心を抱く。 「それはこの村のはずれにある。サイダーモアイの木の樹液だよ。甘くて強い炭酸性があるんだ。これを小型モアイに入れて輸出してるんだけどかなり人気でね」 「へぇ~、この水筒もらってもいいかい?」 「どうぞ持っていってくれ。それともうすぐ夕食もできるはずだから休んでてもらっていいよ」 「ありがとう、そうするよ」  ナタイは清海と分かれると別の建設員達と話をしにいった。 「モアイか……どこの文化なんだ?」  巨大な人間の上半身の形をした石の塊。それはエジプトの巨大な像ほど精巧とはいえないが不思議なオーラを放っていた。  六郎より先にピラミッドにもぐった清海は、六郎と似たルートを通って森へたどり着いた。その後エレコソンダル村に気づかず素通りしてしまい、ここにたどり着いたのである。  この村に来て既に一週間。六郎よりも凄まじい身体能力を誇る清海の移動スピードは日に百キロという凄まじい速度であった。六郎よりも早く次の街にたどり着くがその分長居してしまいあまり総合的には早いとはいえなかった。 「しかしこの村はいいなぁ、食べ物はうまいし。建ってるモアイの像は趣がある」 木陰で寝転がりながら清海は言った。 「六郎達はこっちの世界に来てるんだろうか。だとすればやつはまず大きな都市を目指すだろうな」  この辺で最も大きな都市といえば西の都市だと聞いた。そこは人が集まり情報を得るにはうってつけらしい。 「うーむ……」  涼しい風が眠気を誘う。うつらうつらとまぶたが下りてくるようだ。 小鳥がさえずるなか、いつしか清海は眠りに落ちていた。 「おーい、清海さん。食事ができたよ」  ナタイの呼び声がした清海は目を覚ます。辺りは夕方になっていた。広場のモアイ日時計を見ると時間は18時を指していた。  清海が食堂に行くと、既に他のモアイ建設者が座っていた。彼らは例外なく亀の甲羅を着込んでいた。 「おつかれー」「お疲れ様」 「ああ、お疲れ」  挨拶を返して清海も座る。 「清海さん一人で五メートル級を運んだんだって?すごいねーっ!」 「いやいや、そうでもあるが」   「「「はっはっはっ」」」  建設者達は大いに笑う。 「そういや、清海さん。あんたどうして旅なんてしてるんだい?」  一人の男が質問する。 「おっと、そいつはトップシークレットだぜ?俺が秘密諜報員だってことがばれちゃまずいからな」 「「「はっはっはっ」」」  清海のジョークに食堂は大笑いとなった。 「はい、今日の夕食だよ」  料理が運ばれてくる。 「うおっ!」「やった!」「モアイシチューだ!」 「なんだモアイシチューって?」  清海がとなりの男に聞いた。 「この村の特産品のモアイモとモアイベリコブタを使ったシチューさ、いいかんじの歯ごたえにクセの無い味で俺達はみんなこれが好きなんだ」  そう言うと男はモアイモを口に運んだ。 「うめ~、ほらあんたも食いなよ」 「じゃあ早速、……うまい!」空腹もあってか清海は夢中でかきこむ。 「たった一口だけで、優しい味が口いっぱいに広がる。それにイモでありながらまるでウニのような香ばしさだ」 「ウニってなんだい?」  一人の男問いかけた。内陸のこの村ではウニなんてだれも見たことがないのだ。 「ウニはな、なんと言えばいいか……鋭いトゲの殻で覆われていて中身を取り出して食べるんだが、知らないか?」 「ああ、秋になると山に落ちてるやつか~」 「ちげーーっ!」 「「「はっはっはっ」」」 「やっと着いたな、宿屋を探そう」 「も~くたくた!」  急いで雪山を下った六郎とフィオナは街にたどり着いていた。とりあえず寝るところを探さねばと宿場へと向かう。 「変わった街だな、みんな亀の甲羅を着てるぞ」 「この街はそういう慣習があるらしいの、体に合わせて少しづつ大きいのに変えていくんだって」  その途中フィオナが屋台に目を向ける。 「モアイ屋台だ、なにか食べてかない?」   「モアイ? なんだモアイって?」  六郎は返した。 「知らないの? 凄い有名なのに?」  フィオナは「マジか」という顔をする。 「いや、ほんとになんなんだよ」 「モアイジュースとか、食用モアイとか、モアイ国際映画祭とかほんとに知らない?」 「知らねーよ!」  ならばとフィオナは六郎の手を引き屋台に入る。 「おじさん、モアイジュース二つと塩モアイモ二人前頂戴。あと日替わりモアイもお願い」 「あいよ」  屋台の主人は案の定亀の甲羅を着込んでいる。 「お二人さん、旅人かい?」  モアイジュースを置きながら言った。 「あら、わかる?」 「そりゃあこの街で亀の甲羅を着てなけりゃな」  食用モアイを火にかけながら主人は言った。 「なぁ、モアイってなんなんだ?」 「モアイを知らないなんて変わった人だな」モアイを切りながら主人は続ける。 「モアイは人の形をした石像のことだ。異世界から持ち込まれた文化らしくてな、元々この街ではゴーレム産業が盛んだったんだが、その文化を組み込む形で発展してきたんだ」  主人はそう言うと小型の湯きりしたモアイモに塩を振る。 「できたよ、モアイモだ」  人の顔に似たイモが出てくる。 「どういうことだ、自然にこんな形に育つもんなのか?」 「本場のモアイモだ~!」  フィオナは待ちかねたとモアイを口に運ぶ。 「おいし~~!」  その姿を見て六郎は困惑する。 「正直不気味な見た目だが、南無三!」  モアイモを口に運ぶ。 「……これはっ! サツマイモよりも優しい甘み、それでいて柑橘類のようなさわやかさ、かすかな粘り気がアクセントとして舌を刺激している!!」 「えっ、食レポが本格過ぎる、こわっ」  六郎の様子を見てフィオナは言った。 「お客さんわかる人だね。それじゃあ今日の日替わりモアイ、『モアイヌワシのから揚げ』だよ」 「これもおいしー!」 「これはっ! 外はカラっと揚げられているのに内は赤ん坊の肌に触れている様に柔らかい。おまけに肉汁が閉じ込められているおかげでイヌワシのワイルドな香りが内側から鼻を刺すようだ」 「お客さんさすがだね! 気分がいいからこれも食いな、『モアイグアナの尾頭焼き』だよ!」  目の前に置かれるモアイ顔の爬虫類、六郎は迷わず口に運んだ。 「うむ、初めて食べたが若干鶏肉に近いな。だがまるで高級ブランド牛のようなうまみだ。そして焼く前に細かい波状の切れ込みを入れてバターが染み込みやすくしてあるな」再度口に運びながら六郎は続けた。 「この複雑な切れ込み、包丁じゃないな。フランベルジュだ! そうだろう?」 「ご名答お客さん、それを見抜いたのはあんたが初めてだよ」  主人は満足そうにフランベルジュをチラつかせた。 「うまい、うまいぞぉ!」  最初のモアイに対する猜疑心はどこえやらと六郎は口へ運ぶ。 「わたしも、わたしも食べる!」  屋台はヒートアップしていく。 「いやー、喜んでもらえて屋台冥利につきるよ、せっかくだし一曲聴いていってくれ」  そう言うと主人は手持ちの中型モアイを取り出した。 「これは今夜のモアイ祭で演奏する予定の曲なんだが、先に二人にお披露目するよ」  主人は演奏を始める。 「「やんややんや」」  日は沈み祭りの時間が近づいていた。 「干しモアイもなかなかいけるなぁ」  清海はというものの、建設者仲間と一緒に祭りに参加していた。 「清海、今夜の馬車で西の街へ行っちまうのか?」  建設仲間は言った 「ああ、この街にもだいぶ長居したからな、今夜の馬車で出るよ」  清海は干しモアイを食べながら言った。 「寂しくなるなぁ」  皆が同じように別れを惜しんだ。 「おい、みんな見ろよ! 最新のモアイ合戦だ!」  一人の男が言った。 「なんだモアイ合戦って?」  清海は言った。 「モアイ合戦っていうのは、毎年モアイ祭のときに一流の職人達が新型のモアイを披露する場なんだ。ほら始まるよ」 『えー、それでは毎年恒例のモアイ合戦を開始します。では職人の皆さんをご紹介いたします』  視界の男がそう言うと四人の職人らしき人物が入ってきた。 『まずは一人目、モアイの本場イースター島から参戦したハメカメ・コハイ選手! 去年のM-1GM(モアイワングランプリ)優勝者です! 彼の特徴はなによりも新と旧の完全融合、今年も一切隙のない作品を出してくれるのか!?』 「わーーーっ!」「ハメカメーーっ!」 『そして二人目、この村一番の老舗モアイ店から参戦! タンガロアじいさん! 彼はなんと齢百六十歳! しかし今でも現役でモアイを作り続けられています! 彼曰く『手が動かせるのに歳をとったから作らないなんて、モアイがかわいそうだよ』とのことです! 試合中に寿命を迎えるのだけは勘弁してくださいね!!』 「わーーーっ!」「しぶいーーっ!」 『さぁさぁ三人目、なんとこの男が来てくれました! 現役ゴーレム警備兵、ゴリアテMk-108! 彼は三十年前にゴーレムとモアイのいいとこ取りの機械兵士として作られましたが、休日はモアイ作りをしているとのこと、秘めたる力を発揮できるか!? その答えは鋼の肉体に聞いてみましょう!』 「わーーっ!」「強そーーーっ!」 『最後に四人目、今年のモアイ国際映画祭でも高い評価を受けているこの人! 鳥人族からの刺客、コンドール! 彼はモアイ作りを新たなステップへ昇華することをモットーにされています。やはりその特徴はモアイに岩面彫刻(ペトログリフ)を施すことでしょう! その常識にとらわれないハイセンスな作風は特に若者を中心に人気を得ています!』 「わーーっ!」「かっこいーーっ!」  有名な職人達の登場に観客は湧き立つ。 「まさかこんなメンツがそろうなんて、うっ……」  清海の建設仲間が涙した。 「えっ、これってそんなに泣けるやつなのか!?」  涙する仲間達に清海はツッコんだ。 『ルールを説明します。モアイの材料は自由です、石でも泥でも粘土でもなんでもかまいません! それでは試合開始!』  司会の合図で一斉にモアイを作り始める。 『おおーっとハメカメ選手、早速石を削り始めました! 確実に、着実にその顔は立派なモアイ顔へと変わっていきます!』 「わーーっ!」 『おお! タンガロア爺さんも凄いスピードで粘土をこねていきます! まるで指が百本あるかのような繊細さです!』 「すごいーーっ!」 『ゴリアテMk-108は持ち込んだ巨木を直接カットしています! 採掘用のドリルで豪快に顔を掘っているようです!』 「強そーーっ!」 『ややっ!コンドール選手は他の三人がこぼした残骸を混ぜて作っているようです! 斬新です! 斬新過ぎます!』 「ハイカラーーっ!」 「すごいな、どんどん出来上がっていくぞ」  だが予期せぬ事態が起きてしまう。 「うっ……」 『ああっと!?タンガロア爺さんどうした!?』  突如タンガロアが胸を押さえ倒れた。それを見たスタッフ達が駆け寄る。 「ざわざわ……」「大丈夫か……?」  なにかあったのだろうかと観客達は不安を募らせた、スタッフ達がタンガロア裏に運び出していく。 『えーっ、ご心配おかけして申し訳ありません。タンガロア爺さんは老衰で天空モアイランドに旅立たれました。お空の上で次のモアイ職人達を見守ってくださるでしょう』 「えーーっ!」「うそーーっ!」「そんなーーっ!」 「爺さん……大往生じゃねえか」  建設仲間達はまた涙した。 『というわけでだれかタンガロア爺さんの作品を完成させるという方はいらっしゃいませんか!?』  司会が観客に呼びかける。 「これって観客も参加するタイプなのか?」  清海は仲間達に聞く。 「そうだ、でも俺達は爺さんと同じ村で生きた人間だ。爺さんの経験を上回る作品は出せない。だ清海、他国で生まれたお前の感性なら奇跡を起こせるかもしれない……。お前がやるんだ清海!」  建設仲間は言った。 「いやいや、それはおかしいだろ」  清海は言った。 「俺がでるぜ!!」  清海の言葉を無視して建設仲間は清海の腕を無理やり持ち上げていった。 『おっと!新たな参加者です!服装からすると旅行者の方ですか?』  司会は清海をステージに上げながら質問した。 「やれやれ、飛び入りだがよろしく頼む」 『では助っ人マークの甲羅とモアイのお面をつけてください!』 「ええ……、しかたないな」  亀の甲羅をつけたモアイ面の大男という異様な風体になりながら清海はモアイ作成に取り掛かった。  その頃屋台で食事を終えた六郎とフィオナは宿に来ていた。 「二人部屋を頼みたい」  六郎は主人に言った。 「二人部屋ですね。五ゴールドになります」 「はい、じゃあこれ」  フィオナが財布から金を取り出す。 「そうだ、この街にスキンヘッドの大男が来てるかもしれないんだが、そういう話は聞いてないか?」  六郎は言った。 「大男ですか? 私は見てませんね。でも旅人なら建設現場のナタイさんが知ってるかもしれないです。ほとんどの旅人の人達は路銀と寝床をもらう代わりにあそこで働いているんです」 「ありがとう、後でいってみるよ」  鍵を受け取り六郎とフィオナは部屋に入った。 「いや~、やっと野宿ともおさらばね!」  荷物を置いたフィオナはベッドに顔から飛び込む。 「ぎゃーーっ!」  ベッドにとんだフィオナが悲痛な叫びを上げた。 「どうしたフィオナ!?」  フィオナに駆け寄り体を起こすと、鼻から出血している。 「このベッド硬い……」 「まさか!?」  六郎がベッドのシーツをめくると、そこにあったのは黒い巨大な石の顔であった。 「ベッドまでモアイなのか……」 「硬いーーっ! いやーーっ!」  フィオナはモアイの上を転がる。 「とりあえずシーツの下に寝袋を仕込んだら多少マシになるだろ」  そう言って六郎は準備する。  フィオナが部屋を見渡すと一見普通の部屋だがサブリミナル的にモアイがちりばめられていた。 「うわ、よく見たらドアノブもモアイだ」  小型のモアイでも顔の堀りの深さがよくわかる。職人の細かい気遣いが見受けられる一品だ。だが奇妙な違和感を感じる。 「なんか変な臭いしない? それにそこの壁だけ色が違ってない?」  フィオナが言った。 「確かに違うな、まるで何かが隠されているような……」  六郎は色違いの壁に近づき軽く小突いた。 「うおっ!?」  六郎が小突いた瞬間壁は音を立てて崩れる。その中にはモアイではない。無数の小さな像が置いてあった。 「なにこれ?モアイじゃなさそうだけど」  フィオナが小さな像を一つ手に取る。 「これは、ハニワだな」 「ハニワ?」 「モアイと同じで俺達の世界からもたらされたものだろう。しかしなぜこんな隠すように……」  その瞬間扉の前で数人の足音がする。 「む、どうやらお友達が説明してくれるみたいだな」  六郎が言ったのと同時に扉が蹴破られる。 「お二人さん、見てはいけないものを見ちまったなぁ」  いきなり押し入ってきたのは宿の主人、そして何人かの武器を持った男達だ。 「随分と物騒な格好だが、今日は仮装パーティーでもあるのか?」  六郎は言った。 「そうだな、秘密を暴いた輩を血祭りに上げるつもりだよ、こんな風になぁ!」  そう言うと宿屋の主人は小形の銃を取り出した。 「短筒か!?」 「死ねや!」  六郎に向けて銃弾が放たれる。 「危ない六郎!」  六郎危うし!その銃弾は彼の胸に一直線に飛んでいく! 「お前まさか、短筒くらいで俺を倒せると思ってるのか?」 「なに!?」  六郎の言葉にその場はどよめいた。  六郎は胸に飛んでくる弾丸をハニワの腕部の曲線に当てる。勢いを受け流された銃弾は半円を描くように動き、放たれた元の短筒の中へ戻っていった。 「な、なぜ生きている!?」  なにが怒ったのかわからない主人は酷く狼狽した。 「銃を捨てろ」  六郎は言った。 「黙れ!もう一発、今度こそ……」  主人が引き金を引くと銃が爆発! 砕けた鉄の破片が襲った。 「ぐあっ!」  主人は体の前面にやけどと破片による裂傷負い床に倒れた。帰ってきた弾丸により内部がイカれていたのだ。 「だから捨てろと言っただろう」 「ひいぃ!」  他の男たちがうろたえ逃げ出そうとする。 「こらこらこら~!」  フィオナが弓矢を男達の退路に打ち込む。 「お許しを~!」  逃げるタイミングを失った男達はひざまづいて許しを乞うた。 「お前らは何者だ?このハニワに関係しているんだろう?」 「だめだ! それだけは言えねえ!」  男達は口をつぐんだ。 「じゃあ死ね」  六郎はケペシュを取り出す。 「わかった!言うからやめてくれ!!」男達は心底怯えた声で口を開いた。 「俺達はこの街のレジスタンス『ハニワ解放戦線』だ」 「なんだそのハニワなんとやらは?」 「そんなの知ってどうするつもりだ?」 「質問を変えよう、俺達を始末しに来たってことは、なにかばれちゃまずいことがあるってことだな?」  六郎は言った。 「そ、それは……」  口をつぐむ男達を尻目に六郎はハニワの一つを叩き割った。中から出てきたのは黒色をした粉であった。 「それって、もしかして火薬……?」  フィオナが言った。 「さっきお前が感じた変な臭いの正体だ。これはハニワ爆弾だよ、大方これを使ってなにかするつもりだったんだろう?」  六郎は言った。 「うっ……」  男達は再び口をつぐんだ。 「沈黙ってことは間違いないな。これだけ大量の爆弾だ、使うとすれば人が多く集まるとき、つまり今日の祭りだ。」 「でもなんのために?」  フィオナが言った。 「答えはそこにある」 六郎は崩れた壁の中を指差す。無数のハニワ達の奥にモアイの絵がかけられており、ナイフが突き立てられていた。 「詳しくは分からんが、こいつらは酷くモアイを憎んでいるらしいな。だからモアイ産業のこの街で反乱を起こして乗っ取ろうって魂胆だな?」 「へっ、いまさら気づいたって遅いぜ。今頃俺達の仲間がモアイ合戦に潜入している。人が集まった頃を見計らって先制爆撃の予定だ。はははは、ハニワに栄光あれ」  男達はあざけるように笑った。 「くそ、このままじゃまずいな。急ぐぞフィオナ!」 「うん!」  二人は会場を目指し走った。
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