一条からの依頼

3/8
前へ
/30ページ
次へ
 どうしたんだろう? 一条さんが何かを悩んでる様子なんて珍しい。 「実は、ひとつ相談があるんだが」 「はぁ……なんですか?」 「明日、うちの部署にひとり新人が入ってくる」 「この時期にですか?」  中途採用ってことは経験者なのか、はたまたヘッドハンティングで獲った優秀な人材?  考えていると、一条がここだけの話だというように声を潜めた。 「専務の甥っ子で、塚田悠斗。二十四歳。自由気ままな留学生活を終え、今度は日本の会社で働いてみたいということだ」 「はぁ」 「帆波には教育係をお願いしたい。業務の面は俺がフォローする。頼めるか?」  ジッと見つめられ、コウの脳内が黄色の点滅信号を出す。ふたりしかいない場所なのも危険だ。コウはさり気なく目を逸らし、しっかりと頷いた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1739人が本棚に入れています
本棚に追加