一条からの依頼

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「帆波」 「は、はい」  一条の声に、ビクッと背筋を伸ばしコウが返事をする。 「今、面談いいか?」 「あ……はい」  七月はボーナス月だ。そのため、部署でひとりあたり十五分~三十分ほどの面談をする。コウは使っていない応接室に通され、クッションのいいソファへ浅く腰掛けた。  毎年三回、ボーナス前の月と決算月に行われる面談がコウは大の苦手だった。一条が正面へ座りノートパソコンを開く。 「さて、新年度がはじまって三ヶ月経つがどうだ? 目標達成に向けて順調に進んでるか?」  目標とは三月に立てた自己啓発の目標のことだ。 「えっと……」  ジッと見つめられると、喉が乾いてくる。  この人はどうしてこんなに僕のことを真っ直ぐ見るのか、パソコン画面を見てりゃいいのに。  頭の中で言わなくてはいけないことを整理しているのに上手くまとまらない。 「……まぁ、ぼちぼち」 「ぼちぼちか」  一条が「ふむ」と思案顔になったのに気付き、コウは首を傾げた。
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