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「わかりました。丸きりの新人と同じと考えてよいですか?」
意識してハキハキと答える。
「それで頼む。社会人としてのマナー、電話応対のレベルから。特別扱いは反感を買うし、本人のためにも甘やかすのは良くないと専務からも言われている」
「承知しました」
「面談にかこつけて悪かったな」
「あ、いえ。はい。えっと、面談は?」
コウの問いに、一条はニヤリと笑いパソコンを閉じた。
「日頃のお前ならいつも見てる。ボーナス査定はこれで終わりだ」
は!? えっ!? 今なんて?
「っ……はぃ」
デスクに戻っても、コウの頭の中には一条の言葉がグルグル回って仕事が手につかない。回ってるだけではない。勝手に付け足した言葉まで生まれてしまう。
イツモミテル……
イツモミテル……
イツモ、オマエヲ、チカクデ、ミテイルヨ……
え、ちょっと待って、それじゃあストーカーだしっ! 違う違う! 一条さんはそんなつもりで言ったんじゃないしっ! でもいつもって、いつ!? 今もっ!? ……って、落ち着け俺。そんなの比喩でしょ? 当たり前じゃん。そう、当たり前、当たり前なんだから……自意識過剰が過ぎるよ? ちょっと冷静になろうよ。
暴走しそうなバカげた考えを振り払うようにプルプル首を振ると、画面の端っこにメッセンジャーがポンと出た。畑からだ。
『ひとりで楽しそうだなw』
『うるさいよ』
くだらないツッコミに一言で返し、コウは爆弾のように投げ込まれた一条の言葉をなんとか頭の隅においやろうと努力した。
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