ドムサブユニバース 僕を支配していいのはあなただけ

予約

「はぁ」

　もう一度ショルダーバッグを肩に掛け直し、走り出す電車の外を流れるぼやけた景色を眺めながらグルグル迷走する思考に踏ん切りをつけようとしていた。

　……やっぱり我慢できない。

　コウはスーツのポケットから携帯を取り出し、ブクマしている風俗店のホームページを開いた。いつもお世話になっているミスターＪが本日出勤予定なのは昨夜のうちに確認済みだ。人気プロDom《ドム》である彼は、早く予約しないと埋まってしまうことも承知している。昼休みまでウダウダ迷っていたら、間違いなく本日の予約はとれなくなってしまうだろう。

　お気に入りボタンを押すとミスターＪの画像が現れる。
　ミスターＪは顔出しＮＧだ。写真は上半身裸の後ろ姿のみ。少しだけ横を向いている顔は前髪が下りているのとぼかし加工で肝心なところが見えない。それがまたそそる。同性ではあるけど、美しい顎のラインだと思う。

　美しいのはそれだけではない。首から肩にかけての僧帽筋(そうぼうきん)や、腕の付け根の小円筋と大円筋、からの広背筋、脊柱起立筋を感じる背中に見とれてしまう。