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塚田が豪快に蕎麦をすすり、いなり寿司みっつをペロリと平らげたあと、湯呑の茶を飲みながら言った。
「それにしても、一条さんヤバイっすね」
「え」
思わずコウの動作が止まる。
「思いません? あの人オーラ強すぎますよね」
「う、うん。……そうだね」
妙な胸騒ぎを覚えつつ、素知らぬ顔で答えると、塚田が言った。
「俺、近くにいると妙に緊張しちゃいますもん」
「……あー。うん。そうだね……」
だよね! 僕もだよ! と大きな声で同意したいところをグッと堪える。ここが会社帰りの繁華街にある居酒屋ならビールジョッキをぶつけ合うところだ。
塚田がコロコロとした笑顔になった。
「帆波さんも一緒で嬉しいです。なんつーか、同じSubでも相性ってありますよね。価値観が近い人は落ち着きます」
「うんうん。本当、そうだよね! って、ごめん、同意しかしてない」
コウが苦笑いすると、塚田が目を丸くした。
「謝ることじゃないですよ。帆波さんは聞き上手で、俺のくだらない話に付き合ってくれて笑ってくれて、俺はとても楽しいです」
「あはは。ありがとう」
「こちらこそです」
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