お前にだけ話す秘密の話

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 雨なら雨のデート……例えば映画館とか水族館とか屋根のある場所に行けばいい。  しかし! 動物好きの彼女にパンダを見せてあげようと思って、俺は動物園の前売り券を事前に買っちゃっていたんだ! 「あ、吉田さん。おはよう」 「おはよう。雨宮くん」  彼女はかわいらしい花柄の傘にベージュ色のシンプルなワンピース、それに先が尖ってて少しヒールのついた小洒落たレインブーツを履いていた。こんな雨の日だと言うのに満面の笑顔で来てくれた彼女が眩しい。  ああ、雨雲に隠れた太陽はこんな所にいたんだね……なんて柄にもなくロマンティックな言葉が浮かんできたりしたもんだ。  ……笑うなよ。もう次から突っ込まないからな。 「ゴメンね……まさか雨降ると思ってなくて……」  とりあえず俺は謝った。天気予報じゃ快晴のはずだったんだ。俺の名前がいけないのか?と思ったよ。雨宮だからさ。 「いいよ。折角前売り買ってくれたんだし。ありがとう」  いい子だなぁ、吉田さんと俺は感動した。嫁・涼子の旧姓だ。  涼子は同じ会社の同期だった。かわいいというよりは綺麗系の顔で、同い年だが一緒に並ぶと涼子の方が年上に見える。落ち着いていて品が良くどちらかというと口数は少ないが、俺はそんな所も好きだ。  普段あまり笑わないからか、周りからあの子は距離を作ってるとかお高く留まってるなんて言われていたが、話してみると普通にいい子だった。  俺達は傘を差して、雨の中動物園へ行った。彼女はよほど動物が好きなのか、水溜まりを踏むピチャピチャと言う音すら何となく弾んでいるように聞こえてな。しかし案の定というか、動物達は建物の中に避難しててほとんど見れなかったよ。  パンダは屋内なのでなんとか見れたんだが……この雨の中どこから来たんだって人混みで、パンダ館には10分程度しかいられなかった。  俺と涼子は折角の動物園なのにほとんどの時間を喫茶店か爬虫類館で過ごしたんだ。 申し訳なくて話にも集中出来ないしな、ほとんど爬虫類の記憶しかないよ。トホホ。
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