お前にだけ話す秘密の話

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「天気……危ないね。なんとか前半だけでも降らないといいんだけど……」  彼女は今日もレインシューズで来ていた。むしろ、長靴みたいな少し長めの靴だ。涼子の中では雨が降ることは確定事項らしい。そりゃそうだ。三回のデートのうち、既に二回振っているんだから。 (クソっ! 雨の神は俺が嫌いなのか。いや、むしろ好かれているからこんなことに……?!)  心に不安を抱いたまま、フェスはスタートする。  ボーカルのRYOが熱い挨拶をして一曲目が始まった。フェスどころかライブも初めての俺は、会場の熱気や激しいロックのサウンドに早くも当てられ始める。  リズムに合わせ体を揺らしながらふと横を見ると、涼子は今まででも一番の顔をして輝いていた。フェスに誘って良かったな。俺は心からそう思ったもんだ。  二曲目の時、嫌な予感が的中して早くもポツポツ降り始める。だが、フェスの時に雨がぱらつくなんてよくあることだ。雨の中ライブしているニュースだって見たことあるし、俺は頭にタオルを被って音楽に乗った。 『YEAH!!』 「YEAH!!」  曲が進むにつれて、会場の熱気はますます激しくなっていった。それに合わせるかのように雨脚もどんどん激しくなっていく。既に俺はビショ濡れだ。    タオルをかぶっていないバンドメンバーはもっとビショ濡れでもう濡れ鼠。あの状態でもいつも通りのパフォーマンスを続けるんだからプロって凄いなと俺は感心したよ。お前も今度行ってみなって。  そんなRYO達へのリスペクトを持ちながら、俺は涼子が気になったのだが……いつの間にかオシャレなレインコートを着ていた。薄い黄色でトレンチコートみたいなデザインのな。  フードもしっかりかぶっているので、彼女はこの雨でもまるで問題なさそうだった。俺が雨男だってわかってたから事前に用意してきたのかな……そんなことを考えていた時だ。  ピシャッ、ドオオオン!!  凄まじい轟音と共に、雷が落ちた。ゴロゴロなんてかわいいレベルじゃなくて、何か途轍もなく固くて重いものが地面に衝突したかのような凄まじい音だったよ。    すぐさまフェスの中止が放送されて、民族大移動のように会場から人が去った。雨は凄まじいし人混みに疲れてお互いへとへとだし、帰り道はほとんど会話はなかった。
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