お前にだけ話す秘密の話

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「でも、今日は朝から晴れてるし……」 「雨宮くんにこの話をしないとって思って、朝からずっと憂鬱だったから……」    彼女曰く、学校の行事などは迷惑をかけないように参加しないか気持ちが高ぶらないよう感情をコントロールして臨んでいたらしい。  しかしデートや旅行で気分を下げっぱなしにするというのはほぼ不可能なので、どうしても雨が降ってしまうとのこと。過去に男と付き合ったこともあるが、あまりの雨女ぶりに逃げられたりこの話を聞いて気味悪がられたりしたらしい。  そのせいでしばらく恋愛そのものと縁のない生活が続き、久しぶりのデートがつい嬉しくて雨が振ってしまったようだ。 「黙っててごめんね。今度こそ降らないようにって思ったんだけど、やっぱり抑えられなくて。こんな女迷惑だよね……」 「いや……」  彼女は泣きそうな顔をしている。きっと、今まで散々心無い言葉を男達に言われてきたのだろう。確かに雨は困る。大事なイベントでことごとく雨では間違いなく困る。    だが―― 「最初から雨だってわかっていれば、問題ないじゃないか」 「……え?」 「次から必ず屋根のある所でデートして、映画とか沢山見て……そうだ。水不足の地域に一緒に行こう! あ、旅行は流石にまだ早いかな。ハハハ!」 「雨宮くん……いいの? 私と一緒にいたら、これからずっとイベントの時に雨が降るよ?」 「感情が高ぶったら雨が降るんだろ? じゃあ毎日楽しくしてそれが普通になったら、ちょっとやそっとじゃ雨も降らなくなるんじゃないかな?」  窓の外から光が消えた。どこから来たのか厚い雲が空を覆い始め、ポツリポツリと雨が降り出す。あの日外出してる人には申し訳ないことをした。でも、一人の女の子が幸せになれるかどうかの瀬戸際だったから、勘弁して欲しい。 「俺で良かったらさ、その。付き合わない?」 「……私でいいの? 本当に?」 「勿論だよ。もしOKしてくれたら、外は雨でも俺の心は快晴なんだけどな」  いやぁ、照れるな。もうこれプロポーズだわ。  恥ずかしい台詞を言ってしまった訳だが、彼女の顔ももう大雨。涼子はボロボロと泣き出してありがとうと繰り返し言ってたっけ。外はどんどん雨が強くなってさ。  そういえば、洗濯物干しっぱなしだったなぁなんてぼんやり思った。
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