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不可解な気持ちを抱えたまま停留所のベンチに腰掛けた時、不意に電話の音が鳴り響いた。
心臓がドクン、と一つ大きく鼓動を打った。
電話の呼鈴(これも昔の電話機のものだ)はしばらく鳴っていたが、やがて止んだ。
おれは恐る恐る周りを見回した。
電話の呼鈴はどこから聞こえたのか。
ポケットにケータイは入っていない。
停留所から出ると、すぐ横に公衆電話が据え付けられているのを発見した。
暗くて今まで気がつかなかった。
さっきの呼鈴はきっとこれだろう。
かなり汚れていて、この電話に電気が通っているのが不思議な程だった。
しばらく眺めていると、再びけたたましく呼鈴が鳴り出した。
おれは、ゆっくりと受話器に手を伸ばした。
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