少女と糖尿病

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 ガタガタと、扉を開けて男子が入ってきた。  本を棚に入れるとすぐに出て行く。  返却に来ただけのようだ。 「もういいわよ」  ゴソゴソと這い出る。 「よく、人が来るとわかったね」  有希はフフフとほくそ笑んだ。 「足音が聞こえるから」  一翔には全く聞こえなかった。 「よく聞こえるね」 「誰が来たかもわかるのよ」 「足音で? すごいな」 「ここにくる人は、大体決まっているからね」  有希は、まんざらでもない顔をする。 「今のは、思った通り奥山先輩だった。3年の中では成績トップ。勉強熱心で、たまに図書室を利用するの」  一翔は、3年の顔まで覚えていないし、覚える気もない。 「いつも、こうして隠れているの?」 「ここは田舎だから、男子と女子が二人でいるとすぐに噂が広まっちゃう。見られないのが一番。それで隠れた」 「そうなんだ」 「東京ではそんなことないんでしょ?」 「そうでもない。どこも同じだよ」 「うそお」  有希は、一翔の言葉を信じなかった。  一翔は、ふと、疑問が出た。 「変なこと聞くかもしれないけど、もしかして、僕が来た時も隠れていた?」
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