32人が本棚に入れています
本棚に追加
ガタガタと、扉を開けて男子が入ってきた。
本を棚に入れるとすぐに出て行く。
返却に来ただけのようだ。
「もういいわよ」
ゴソゴソと這い出る。
「よく、人が来るとわかったね」
有希はフフフとほくそ笑んだ。
「足音が聞こえるから」
一翔には全く聞こえなかった。
「よく聞こえるね」
「誰が来たかもわかるのよ」
「足音で? すごいな」
「ここにくる人は、大体決まっているからね」
有希は、まんざらでもない顔をする。
「今のは、思った通り奥山先輩だった。3年の中では成績トップ。勉強熱心で、たまに図書室を利用するの」
一翔は、3年の顔まで覚えていないし、覚える気もない。
「いつも、こうして隠れているの?」
「ここは田舎だから、男子と女子が二人でいるとすぐに噂が広まっちゃう。見られないのが一番。それで隠れた」
「そうなんだ」
「東京ではそんなことないんでしょ?」
「そうでもない。どこも同じだよ」
「うそお」
有希は、一翔の言葉を信じなかった。
一翔は、ふと、疑問が出た。
「変なこと聞くかもしれないけど、もしかして、僕が来た時も隠れていた?」
最初のコメントを投稿しよう!