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「……僕、君に謝らなきゃいけないことがある」
「謝る? なんのこと?」
有希は、一翔の深刻な表情を見て不安になった。
「僕は……、君を詮索した……」
「………………」
うなだれる一翔を、有希は黙って見つめる。
「君のことを知りたくて……。父の患者だと知って、カルテを見た。君が詮索されるのは嫌だと聞いて、僕は……、自分が重大な過ちを犯していたと気付いたんだ……」
「………………」
「君が詮索されたくないと言っているのを聞いて……、僕は……、僕は……。自分も同じだったじゃないかと、君に直接聞くべきだったと……。今、とても後悔している」
「詮索したんだ」
有希の顔が険しくなる。
「このまま怒って僕を罵倒して、図書室から出て行かれても仕方がないことをしたと思っている」
一翔は、両ひざをつき、両手をバンッと床について土下座した。
「本当に悪かった! この通り、謝る! 許されず嫌われたとしても構わない。すべて受け入れる覚悟はできている。ただ、君を傷つけたことを謝りたい」
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