おやきと僕の部屋

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「なんか、たくさん頂いちゃって悪いな」 「先生にはいつもお世話になっているから」 「で、どうやって食べればいいんだ?」 「一時間ほど塩抜きすれば食べられるよ。茹でてあるからそのまま食べてもいいけど、酢の物にしたり、炒めたり。何にでも合うの。便利でしょ」 「どうやって食べてもいいんだな。じゃ、串でも刺して丸ごとイカ焼きにしてもいいんだな」 「豪快! 東京ではそんな食べ方をするのね」 「いや、東京というよりは、海に行くと見かける浜辺の食べ物だけど」 「海ではそんなのを食べるの!」  有希は、浜辺でよく売られているイカ焼きを知らなかった。 「もう一つ。鯉の甘露煮も持ってきた」 「鯉? 鑑賞しても、食べたことはなかったなあ」 「この辺りでは普通に食べているんだけど」  有希は、続けて出した小さい保存袋から甘露煮を出す。  サイコロ状に切られた鯉の身は、醤油と砂糖で煮詰められて真っ黒。  一翔は一口食べてみた。  弾力があり、噛み応え十分。  甘辛い味付けは、白飯が欲しくなる。 「意外にいける」 「味が濃い目だから、おやきに入れるにはいいかも」 「こうなると、なんでもありだな」 「塩丸イカで何か作るね。ボウルを貸してくれる?」 「ここにあるのを自由に使っていいよ」  有希は、一時間ほど塩抜きすると、細かく刻んで、白味噌、砂糖を加えて手早く和えた。  鯉の甘露煮、塩イカの味噌和えを入れた2種類のおやきが完成。  二人で試食する。 「どう?」 「どっちもいける。大成功!」 「おやきって、万能でしょ」  二人とも大満足。 「桐谷先生にも食べてもらいたいな」 「帰ってきたら出すよ。きっと、驚くね」  おやきは、時間も場所もこだわらないで気軽に食べられる。携行食にもなるだろう。
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