32人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「なんか、たくさん頂いちゃって悪いな」
「先生にはいつもお世話になっているから」
「で、どうやって食べればいいんだ?」
「一時間ほど塩抜きすれば食べられるよ。茹でてあるからそのまま食べてもいいけど、酢の物にしたり、炒めたり。何にでも合うの。便利でしょ」
「どうやって食べてもいいんだな。じゃ、串でも刺して丸ごとイカ焼きにしてもいいんだな」
「豪快! 東京ではそんな食べ方をするのね」
「いや、東京というよりは、海に行くと見かける浜辺の食べ物だけど」
「海ではそんなのを食べるの!」
有希は、浜辺でよく売られているイカ焼きを知らなかった。
「もう一つ。鯉の甘露煮も持ってきた」
「鯉? 鑑賞しても、食べたことはなかったなあ」
「この辺りでは普通に食べているんだけど」
有希は、続けて出した小さい保存袋から甘露煮を出す。
サイコロ状に切られた鯉の身は、醤油と砂糖で煮詰められて真っ黒。
一翔は一口食べてみた。
弾力があり、噛み応え十分。
甘辛い味付けは、白飯が欲しくなる。
「意外にいける」
「味が濃い目だから、おやきに入れるにはいいかも」
「こうなると、なんでもありだな」
「塩丸イカで何か作るね。ボウルを貸してくれる?」
「ここにあるのを自由に使っていいよ」
有希は、一時間ほど塩抜きすると、細かく刻んで、白味噌、砂糖を加えて手早く和えた。
鯉の甘露煮、塩イカの味噌和えを入れた2種類のおやきが完成。
二人で試食する。
「どう?」
「どっちもいける。大成功!」
「おやきって、万能でしょ」
二人とも大満足。
「桐谷先生にも食べてもらいたいな」
「帰ってきたら出すよ。きっと、驚くね」
おやきは、時間も場所もこだわらないで気軽に食べられる。携行食にもなるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!