肆 恋華の、等しく咲き揃う

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 内侍司(ないしのつかさ)でのお務めを始める前は、私と光成お兄様のことで盛り上がってくれるのは、撫子の君――――珠子(たまこ)だけだった。  内裏では、(かみ)の女房の皆様相手にこんな話は出来なかったから、うずら丸だけが私の理解者だった。  まさか、次に会ったら『お粥を食べる度に必ず唇を火傷する呪い』をかけてやろうと目論んでいた相手と、光成様愛でこんなにも意気投合できるなんて、思ってもみなかった。  例え、想いは届かなくとも、想い続けることはできる。  こうして、気が合う者同士、恋の華を咲かせることができる幸せを、私は見つけた。  現在(いま)が楽しければ、それでいい。これでいい。  いつか、お兄様ではない誰かを熱烈に恋い慕う。そんな未来が、私にも訪れるかもしれないのだから。  だから今は、胸に秘めた固い蕾がいつの日か綻び、紅く艶やかに咲きこぼれる時を待てばいい。 「あつこー!」 「近江様っ」 「はい、なんですか?」  この、とても大切なふたりとともに――。 -終-
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