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内侍司でのお務めを始める前は、私と光成お兄様のことで盛り上がってくれるのは、撫子の君――――珠子だけだった。
内裏では、上の女房の皆様相手にこんな話は出来なかったから、うずら丸だけが私の理解者だった。
まさか、次に会ったら『お粥を食べる度に必ず唇を火傷する呪い』をかけてやろうと目論んでいた相手と、光成様愛でこんなにも意気投合できるなんて、思ってもみなかった。
例え、想いは届かなくとも、想い続けることはできる。
こうして、気が合う者同士、恋の華を咲かせることができる幸せを、私は見つけた。
現在が楽しければ、それでいい。これでいい。
いつか、お兄様ではない誰かを熱烈に恋い慕う。そんな未来が、私にも訪れるかもしれないのだから。
だから今は、胸に秘めた固い蕾がいつの日か綻び、紅く艶やかに咲きこぼれる時を待てばいい。
「あつこー!」
「近江様っ」
「はい、なんですか?」
この、とても大切なふたりとともに――。
-終-
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