弍 ひみつの花園

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「これが、あお。こっちは、しろ。それに、むらさき、か?」  ひみつの花園。それは、私たちが初めて出会った場所。そこで今、開花したばかりの朝顔に鼻先を寄せた白猫が、お花の色を声に出し、確認している。 「そうよ。全部合ってるわ。じゃあ、こちらのお花の色は?」 「あか、だ。うずらまるの、めのいろと、おなじいろ」 「その通り。うずら丸は、もうたくさんの言葉を話せるわね。よく頑張りました」  出会って、ひと月。まだ少し、たどたどしいものの、多くの言葉を知ったことで日に日に滑らかに話せるようになっている。私と話すぶんには何の支障もない。 「うん。うずらまる、がんばった。あつこ、ともだちだから、もっとたくさん、はなせるよう、がんばる」 「ふふっ。うずら丸と私は、仲良しのお友だちですものね」  灰炎(かいえん)と名乗った妖猫に、私は『うずら丸』という呼び名をつけた。  『ぴよーんっ』という、とても珍妙で、それでいて何ともいえない可愛らしいこの子の声が、(うずら)の鳴き声に似ていると思ったから。  うずら丸もその呼び名を気に入ってくれて、自分のことを『うずらまる』と呼ぶさまが、とても愛らしい。  その時の声に、どこか誇らしげな音が混じっていて。得意そうに『うずらまるが……』と語っているのを聞く度に、「あああぁ、可愛いぃーっ!」となって、小さな体躯を抱き上げて頬にすりすりしたり、抱きしめたまま地面でごろごろと転がってみたい衝動にかられてしまって。  それを抑えるのが、わりと大変。
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