それでも出勤

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「軽自動車だから燃費もいいし、途中のガソリンスタンドで入れればいいよね、楽勝よ」  甘い考えで駐車場を出て会社へ向かっていた矢先、最初の試練が訪れた。 「交差点に、おまわりさんが立ってないわね」  停電してるため、市内すべての信号機が消えたまま。  警察官も対処しきれないらしく、道路は無法状態。  一旦停止しないで猛スピードで走りすぎて行く車や、交差点の手前で止まったまま動けないでいる車にクラクションを鳴らしたりで恐怖を感じる。  そして、出会い頭の物損事故を目にして気を引き締めた。  港に通じる広い四車線の国道、いつもトラックで賑わってるのに姿が見えない。  一般車両もまばらで、ちょっと寂しい。  道中にあるガソリンスタンドは、どこも営業してない。  コンビニに立ち寄って食料を買おうと思っても、駐車場は満車で照明の消えた薄暗い店内に人がひしめき合って異様な感じ。 「あれじゃあムリよね」  コンビニでの買い物は諦め、車を走らせる。  途中にあるホームセンターは店舗が閉まってるにも関わらず、入り口に長蛇の列ができていた。もちろん駐車場は満車。  会社までの道のりを一心不乱に運転して、どうにかたどり着く事ができたけど、社員専用の駐車場に車が数台しか止まってない。  やっぱりみんな、この状況で出勤しても仕事にならないと判断したみたい。
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