相性の悪い上司

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相性の悪い上司

 車を降りた先にある正面玄関、いつもなら左右両開きの自動ドアを開けたまま清掃員さんが作業してるけど、扉は閉まったままで会社内の照明も消えたまま。  裏手に回って社員専用の入口に向かってみると、数人ほど顔見知りの人がいてホッと胸を撫で下ろした。 「成瀬恭子くん、キミ、来たのか?」  朝から直属の上司である課長にフルネームで名前を呼ばれてイラッとしたところ、追い打ちをかけるようにムカつく仕草で言ってくる。  課長は私を見ながら扉を指差し、あきれ顔でいる。  数人の男性社員が扉を開けようと奮闘してるけど、セキュリティの電子ロックが(はず)れないまま、何をしても扉を開く事ができないでいる。 「課長、自家発電はダメなんですか?」  私がそう問いただすと、課長は顔の表情を曇らせながら嫌みったらしく言ってきた。 「自家発電のエンジンや装置は屋上にあるんだよっ! 中に入って階段を上がっていかないと、何もできないべさっ!」  興奮ぎみに話す課長に聞こえないような小声で、私は(つぶや)いた。 「だめだべさって、北海道弁で鼻息荒く私に言われてもねえ・・・・・・そんなふうに短気だから奥さんと子供に逃げられるのよ・・・・・・」 「小声でブツブツとキミは何を言ってるんだ!」 「いえ、べつに・・・・・・」  同僚の女性社員はクスクスと声を殺して笑ってる。 「課長、そういえば中国からの船便で届くコンテナって、今日じゃありませんか? それに合わせてトラックの手配もしてたはずなんですけど」  課長は脂ぎった額の汗を手の甲で拭い取り、髪が薄い頭を私に向けてキレぎみに言い放った。 「そんなの知るかっ! 何かあったらキミの責任だからなっ! だいたい課長補佐って役職についてるんだから、キミがなんとかしろっ!」  私に人差し指を向けて、理不尽な事を言い放つ課長。 「うわっ、でました、課長の``何かあったらキミの責任だ``ってやつ。余震が続く、こんな状況でよくそんなこと言えますね」 「うるさい、厚化粧のキラキラOLめっ! 人事課に交渉して違う部署に回すぞっ!」  私は頭にきて、腕組みしながら目を細め、フンッと鼻を鳴らして言い放った。 「課長の額だって油ぎってギラギラしてるじゃないですか! 脂性のギラギラ中年っ!」 「なんだとキラキラOLっ!」  相性の悪い上司といがみ合ってる姿を見て、周りの同僚が止めに入る。
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