ブラックアウト

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 帰宅して部屋の時計を見ると、すでに午後6時を過ぎていた。  だんだんと日没が近づいてくる中で、不安が襲いかかってくる。  会社の制服を脱ぎ、スエットに着替えて前髪をヘアーバンドで固定。いつも寝る前に部屋ですごすリラックス状態になったのだけど、何だか落ち着かない。  水も出ないので顔も洗えないし、メークだって落とせないでいる。  途方に暮れていた時、ふと思い出した。 「そういえば、昨日の夜に入ったお風呂の水、追い炊きでもう一回入ろうと思って捨てずにとっておいたんだ!」  慌てて風呂場に駆け寄り浴槽の(ふた)を開けると、生暖かい水が半分以上たまっていた。 「やった、これでトイレと洗顔ぐらいつかえる!」  サラダボールで水をすくい、トイレのタンクに注ぎ込む。  そして、ボールに貯めた水を洗面所に持って行き、顔を洗ってメークを落とした。 「あ~あ、さっぱりしたわ」  洗面所の照明をつけようとスイッチを入れる、でも明るくならない。停電は続いてる。 「ですよね~」  そう(つぶや)いたと同時に、お腹がグ~と鳴いた。  空腹を紛らわすため、、生ぬるいミネラルウォーターのペットボトルを取り出して飲む。  そしてベッドに腰を下ろし座り込んだ。  薄暗い部屋の中でスマホを取り出し、母親に連絡を試みる。でも繋がらない。  彼に向けて試すけど、やっぱりダメ。  向こうも安否の確認を取りたいはず、でも災害で混乱してる回線が落ち着くまで無理なのかな。  SNSは・・・・・・ネットがすごく重くて使えない状態。  それどころか町の中だというのに電波レベルが1って、どういうこと?  基地局の蓄電バッテリーが消耗してきて、やがてスマホや携帯電話が通じなくなってくるという話しが現実味を増してきた。  太陽が沈み、苫小牧の町全体が暗闇に包まれていく。  ブラックアウトの夜が、この時から始まろうとしていた・・・・・・
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